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いつの頃からだろうか、少なくとも一日に3杯は呑む珈琲
学生時代、ガラスの瓶に入ったインスタントのネスカフェの粉をカップに熱湯を注ぐ。
熱ければ美味しくなると信じていた。
東京生活3年目、アパートで買ったばかりのコーヒーミルを回し、サイフォンで淹れる。
それだけで、暮らしに潤いを感じたり。
そんな事を想い出して心穏やかになる「オーロラcoffee」
外観は本当に小さい、がドアを開けたら拡がるマスターの世界。
たった4席の小さなカフェは、光も綺麗
「いらっしゃいませ」しか言わないマスターに、
「さて、今日は、何にしようかな」
ともちかける、
「12月から始めた美味しい珈琲があります」
珈琲の話になると彼の口から溢れでる言葉。
「ゲイシャ、エル・インヘルト農園のマラゴジッペという大粒の品種なんです」
ゲイシャとは、日本の芸者とは無関係で「Geisha」というエチオピアの地名。
もともとエチオピアの野生種。
パナマに持ち込まれたが忘れ去れていたが、突然2004年に国際品評会に現れ喝采。
その後最高落札価格を続けているという。
初めて世に出した農園は、谷にありほとんどが生産性の高い品種に植え替えられた。
急斜面のさらに奥は作業も苦労で忘れ去られていたらしい。
アラビアのカップ&ソーサーもいい
香り高く、眼を閉じていたら珈琲とは思えない
フルーティで革命的な風味と言われている貴重な珈琲。
初めてゲイシャを飲んだ時、花や果実の香りと喉越しの良さに驚きながら、
あっという間に飲み干した。
珈琲好きは、衝撃を受けるかも。
それから虜になった。
マスター手製のティラミスは、珈琲とピタリ
チーズと珈琲と隠し味的なレモン風味で、すっきりさっぱり。
「贅沢な時間です」
と正直な気持ちを伝えると、
軽く頷いて微笑む。
ティラミスの味、ビジュアルも進化している。
入る度、小物、テーブルが変っていたり、彼は、日々歩んで行く。
小さな変り様も楽しみ。
ある人の話し
「あそこに行った時、あたし酸味の強い珈琲は苦手ですと言ったのね」
すると、
「普通の酸味とは違うことを説明しだしたの」
「彼の話しぶりは、ぜんぜん嫌みが無くて、試しに飲んでみたら凄く美味しかったの」
時々行っているそうだ。
働きながら平時は夜、そして土日に開ける。
雫石の自宅の庭先に小さな窓。
地元の牛乳なども好んで使う。
「珈琲の焙煎をしながら、たった4席のカフェでも、やろうさえ思えば、ちっちゃな場所からでも始めれるのね・・・」
とある人は、ちらりとこっちを見た。
雫石は、その日降った雪が路の端に残っていた。
車の温度計は-1°
凍りかけた道を照らす街灯と月。
急に冷えたせいで、濃い霧が出てきた。
闇の中、しだいに月の輪郭が、ぼやけていく。
温かい珈琲がもう一杯欲しくなる。
家に帰り、早速、珈琲を淹れた。
贅沢にも今宵、2杯目のゲイシャ。
香りが心も満たす。
「今夜は、やらなきゃない事を頑張ろうか」
と思う。
盛岡の街から車で30分はかかる雫石の外れに、ひっそりと。
今では盛岡の岩手大学傍の「ちひろ菓子工房」でも、
オーロラcoffeeの豆を使いオリジナルのブレンドを出している。
美味しいケーキと一緒に、彼の世界の入り口を味わえる。