「萬花京」
盛岡駅前のホテルの2階。
以前は、菜園にあった。
その辺には中華の店が3軒ほどあり、
それぞれ個性的だった。
前ほどではないが、移ってからも何度か来ている。
<食いしん爺は酢豚好き、萬花京の中華料理は、口に合う>
冬だった。
雪が舞っていた。
菜園の頃の萬花京で、ご飯食べながら、
「さて、打合せしますか」
数分後出て来た前菜、
「あら、クラゲ? 美味しい、ねぇビール頼んでいい?」
話し終わる前に、すらりとした長い手が伸びた。
「あの、ビール下さい、いいですよね」
良いも悪いも・・・・無い。
さらに数分後、
「これを、直すのは無理ね、今日は、やめ!もう一杯いい?」
また伸びる手。
その日の打合せは、
破綻(笑)
まあ、頑張ってくれてるから、今夜は、ご褒美。
クラゲの酢のもの
細くて透明の海藻、やや太めで薄茶色のクラゲの2種。
どちらも、コリコリ、透明な方は、柔らかで、
もう一つは、歯応え良し。
2つの食感が食欲を掻き立てる。
こうなれば、どうぞ、お代わりのビール。
「美味しい!」
「わぁ~綺麗、こりゃあ満足だなあ~」
長身でタイトスカートに、ピンヒールなのに、
口は、オッサン。
まあ、そのギャップがいい。
「あ~旨い!」
グラス片手に、ぎろり、おっきな眼玉。
でも、仕事は、ガッツリ、
責任感の塊。
それも、いい。
「紋甲イカって? どれどれ、柔らかくて旨い!」
3杯目のビールも直ぐ空。
〆に炒飯を頼んだ。
これで今日は、終わり。
「なんて、パラパラなの、とまらない」
食べ、呑みながら、またギョロリ。
少し、怖いかも(笑)
「いつも、こんなに美味し物ばかり食べてるのかい?」
とんでもない!
時々の美味しいは、食いしん爺のストレス解消の一つ。
静まり返って、
黙々と食べ、一人は呑みも飲んだり。
家まで送り届ける事にした。
「ちやんと呑んだ量は覚えてるよ、4杯でしょ、まだ、酔ってません!」
事実は、5杯。
久し振りだった様なのと色々とストレスが溜まっていた様だ。
家の前に着くと、
「もう少し、走ろうよ」
今日は付き合うとするか、まだ、夜は長い。
アクセルを踏むと同時に、助手席からビシュ!
糖質ゼロの缶ビール。
帰り際、コンビニで煙草と缶コーヒーを買い、トイレに行った。
その隙に、なんと手際のいい奴。
「一人で、乾杯!」
御機嫌な酔っ払いは、自分でうける。
肩を揺らして笑い、伸ばした手で運転手の腕を叩く。
街の光を集めて、怪しく艶を帯びた大きな黒い瞳。
「もっと走ろうよ」
萬花京の帰り道は、遠かった。
3日後、いい感じでプランを持って来た。
そんな事を想い出しながら、駅前に移った「萬花京」で、
今宵は一人、同じメニュー。
ちょっと食べすぎ。
いよいよ、北国の桜も咲いた、今年は、梅と一緒。