繋温泉帰り
心身共に満足した帰り道、ちよっと西へ。
さらに、美味しい珈琲を呑んで帰ろうと、
欲が出る。
;繋温泉からは、雫石は直ぐ。
街を走り抜けて御明神の郵便局まで来ると、
オレンジ色の窓が見え、僕の心に灯がともる。
オーロラcoffee。
初めて見る入口の灯り。
大きなザックを傍らに、本を読んでいる女性の客が一人。
今日もゲイシャを味わえ、三度目の大満足。
来て良かった。
実に味わい深い珈琲は、美味しい。
満足の重ね着、益々温まる。
「実は、その椅子、いつものと違います。ちよっと汚れて、どうしようかと思ってたら、買った先の家具屋さんが、突然いらっしゃいまして」
と紹介された。
「こんにちは」
マスターは、ネットで家具を取り寄せている。
そこの人が、オーロラcoffeeを突然、訪ねて来た。
それは驚く。
でも、2人は長い付き合いの様に見えた。
話し混んでいるうち、その人は、長野の出身で、
震災のボランティアで遠野を拠点に、
高田、大船渡、釜石、大槌などを回ったそうだ。
帰ってからも何度も、訪れている。
そして、6年後の様子が気になる。
3・11に合わせて夜行バス。
「知り合いになったおばあちゃん達が元気で安心しました」
その帰り、盛岡に寄り、お客さんであるオーロラcoffeeを訪ねた。
盛岡から田沢湖線に乗り、
駅から、ザックを担いで歩いて来たのだ。
この、洋服を掛けるハンガーも、マスターの手にかかると、
道具架け。
彼女が言う。
「驚きました。こんな使い方もあるんだと」
しばらくして、彼女は、
大きなザックに、丸く平たい物を無理やり突っ込んで四苦八苦しだした。
不思議に思って見ていると、マスターが察して、
椅子の汚れを話したら、座板を外して持ち帰り修復させて欲しい、
とおっしゃって・・・
それで、別の椅子。
楽しい時間は、早い。
田沢湖線で帰ると言うので、
無理やりの様に、盛岡駅まで爺が送る事にした。
帰りも、盛岡から夜行バスに乗るとのこと。
「びょんぴょん舎の盛岡冷麺を食べて帰ります」
と笑う。
長野や沿岸の話を聞いた。
風化に不安を抱くが、自分だって普段は仕事に追われる日々だと
歯軋りしている様だ。
「忘れないこと」で意見が一致。
盛岡駅前の「びょんぴょん舎」の前で別れた。
「役に立ったかどうかは、分かりませんが、岩手の人が大好きです」
こんな人達も被災地を支えてくれていた。
ボランティアをしていた間に、盛岡さんさ踊りにも出たそうだ。
「普段、どちらかと言うと、おとなしいと思っていた人達が、いざ、お祭りとなると太鼓や踊り。凄かった。パワフルで驚きました」
オーロラcoffeeの座板を背負って帰って行った。
「マスターに、常連さんです」
と紹介された事を想い出し、少し嬉しく、一人照れながら家に向かう。
でも、
「ほんとは、2人だけの方が良かったんだろうなあ」
と車の中のお邪魔な爺の独り言。
3日後、Facebookで繋がった一期一会。