最近、爺は、歯医者さんに通っている。


  治療を終え、ちょっと時間があった。 


  さて、人と会う約束の時間に一時間ほどある。では、ちょっと珈琲タイムにしようかなと思った。  


  歩き始めて、肴町のある人と話していたときのことを思い出した。




  「肴町のアーケードの南側に喫茶店があったような・・・・」と爺が言うと


  「肴町 48 がありますよ、昔からの喫茶店ですよ、今も時々行ってます」


  とちょっとムッとして話していた。


  「もう少し肴町を知ってください!」と言わんばかりだった。


  


  言われてみると、肴町と言えばナナックの界隈しか歩いていない。


  どうだったかな? と思いながら肴町のアーケードの方に向かった。

  どんどん奥へと歩いたが、カフェらしき店は、見当たらない。




  「どこだったんだろう・・・・」


  さらに歩いて行くと、南の入り口が見えて来た。


  その時、看板を見つけた。


  たしか、ちょっと奥まって隠れ家的な店だった。


  「そうだ、ここだ」


  建物の間の通路を入って行くと肴町48とガラスに書いたドアがある。


  ドアの間際に立つと忘れかけていたせいか、微かにためらいがあったが、この前に話してくれた


 人の言葉がぐいっと背中を押す。


  


  中に一歩入った途端にタイムスリップした。


  一瞬にして「昭和の爺」が蘇る。




  「こんにちは、あ~、懐かしいですね~、二十何年ぶりだろう~」


  「そうですか、それはそれは、よく来ていただきました。ありがとうございます」

  「チーズケーキとコーヒーをセットで」


  爺は、メニューを見なくてもオーダー出来た。




  「はい、承知しました」


  マスターの笑顔を見ていると昔の記憶が被る。

  

  まずは、チーズケーキを。まろやかでベーシックな味がした。


  あの頃、食べていた。













            淡い雪の様なチーズケーキ。




  









             美味しそうです。












             


        一口ごと、チーズケーキは口の中で溶けていく。そして、いよいよ記憶が蘇る・・・  













  


            珈琲を一口、飲んでゆっくり店の中を見回した。


  









  


            使いこなされ、味わいが出てきたテーブル。あの頃は、新しかったに


           違いない。でも、落ち着くなあ~ きっと当時からのものなのだろう。


            




  









            その頃も壁に、絵画が飾られていたか? どうかの記憶は無い。


   








           店内を歩いてみた。







  







             そうだ、窓から庭の草木が見えていた。





  







             


            「庭の見える席か、入口の辺りに座っていたんですよ・・・このあたりかな~」

            


            「肴町にアーケードが出来て一年後に開店しました。開店前に、下見したときに、


           ここに庭が見えたんですよ、それが、決めてかな。まあなんとかやってこれてます」


        

            また、入口の方の席に戻った。




            「明日は?」


            「関係ないでしょ!」


            口の辺りだけ笑ってそう言う。


            「関係なくはないだろ」


            「束縛されるのは、こりごり」


            「別に、束縛なんかするつもりはないさ、いつも聞いているわけじゃないだろ!」


 


            「髪伸びてるよ、斬ったら、スパッと、できないでしょうね」と横を向いた。


            


            確か、二週間ほどたって、また、此処にいた。




            「わあ~、そんなに切っちゃったの!よく思い切ったわね~」と大声で笑う。 


            わだかまりを残して早く店を出た記憶がある。            


            


            そんな日が重なり、爺は「心」も摘めてしまった。


            


            何故、突っかかって来るのか、理由を知っていても吐き出される言葉を受け止める


           心の余裕など、その頃の爺にはなかった。「若さ」なのだろうか?




            窓の外は、だいぶ薄暗くなってきた。


            爺の心も黄昏てしまいそうになる。(笑)


           


   












        「どうも、ありがとうございました。また、来ます。色んな事が蘇ってきます」


        と言うと


        「そりゃあ、よかった。続けていてよかった」


        とマスターは笑う。

















             ここは、隠れ家そのもの。


             常連さんとわかるお客さんとマスターが楽しそうに話し込んでいた。


              

          通路で隠れ家を目指す一人の女性とすれ違った。




  










        肴町ホットラインから見ると、看板がなければ、奥にカフェがあるとは・・・・


                                        


               


  






          


             通りに向かう一歩ごとに現実が近くなる。           





       二十数年ぶりに来てよかった「肴町 48」


       「48」の名前の由来は、昔は、知っていた様な気がする。今度、確かめてみよう。

              



    場所は、すぐ南の入口であり出口そば、です?















    ホットラインを戻りながら、あちこち見回してみると何でも一通りのモノが揃いそうだ。


    













    そうそう、、肉屋さんもあったあった!












 

      神社は、昔は無かったと思う(笑)















     色々な学校の制服が並び・・・・















    瓦屋根の建物まである。





 









    そうかと思えば、もうこれは「アーケードの中の産直」みたいだ。














   365Мの中に、約80店舗がびっしり並びパチンコ、薬局、ホームセンターから


  蕎麦、書店から生活に必要なものが揃っている。


    一度、改修しているが、昭和の50年代後半にアーケードを作る時は、さぞや、大変だったと


  思う。様々な課題を乗り越え、江戸時代から続く商店街をアーケードが、まるで昔、中尊寺の


  金色堂を守っていた「鞘堂」の様に風雨だけではなく、色々なものから商店街を守っている様に


  思えた。




   今度、「肴町のグルメ」をじっくり、探訪してみようと思う。


   「肴町ホットラインのカフェ「肴町 48」で忘れかけていた記憶が次々と蘇った。


   まだまだ爺の記憶も眠っている様だ。


   今日もいい一時を過ごしたなあ~