大会直前まではBPMを一杯に上げたこともあり常に追い込む練習だった。
多少苦しくてもレース以上に苦しいはずはないとペースダウンはしなかった。
大会1週前にして全ての練習を消化し、後は毎日のストレッチと多少の筋トレ、
2日おきの速度にもbpmにも拘らないランだけ。
するとこの拘らないランが実に楽しかった。大会でもこの気持ちで走れたらと願うばかりだった。
スタート前には防寒兼用の100均のレインコートは脱ぎ、万一の雨に備えて腰に巻いた。
かなりの走力のあるグループ位置からのスタート後、懸念の直角隘路も
混雑はなく、自然に流れに乗って走り抜けられた。
2,3km走って、きつくもなく問題なく流れに乗れると思っていたが、instant speedを
見るとkm5分数秒、時速12km程度で走っている。
これでは42km持たない。
で、いつものkm5分15秒から20秒程度に落とすと、両脇からどんどん抜かれていく。
もう既に前から落ちてくる連中を抜いてはいるがその数倍抜かれていく。
第一関門通過後の給水はパス。体も十分暖まり、レインコートを道ばたのstaffの足下に
捨てる。雨は降ってこない、わずかにパラリと来るが何ら問題にならない。
もう一つの懸念の風も軽い向かい風、むしろ歓迎。
この条件で達成できなければいつクリア出来る?!という気持ちで走る。
どんどん汗ばみ、アームウォーマーとして使う100均の日よけ止めを外し、これまた
100均の手袋を脱ぎ、ついには帽子も脱いだ。
河川敷を快調に走る。予定より距離を稼げている。これなら実現できる!と
胸をわくわくさせながら足を運ぶ。
食べたくなかったが10km、20km地点でジェルを口に。小刻みにウェストベルトの
PETbotttleから水分補給。
30km地点では2時間38分。20分以上の貯金。残りを時速10kmでもいける!
と思った頃から足が出ない。BPMのrhythmに乗せられない。
みるみる遅くなり時速9kmの維持も怪しくなってきた。
そのうちからえづきが始まった。
低血糖!
カロリー補給ミスでガス欠だ。しかし、胃は何も食べたくない。
えづいているときに食べられる者はそうはいないだろう。
無理矢理ブドウ糖タブレットを口に入れ噛みつぶす。早く血糖を上げてくれ!
次は水分だ。思った以上に発汗している。気が付けばシャツはべとべとだ。
給水が遅れて脱水気味だ。
給水所まで待てない!volunteerの持つ麦茶や水を求めて沿道の右左と走る。
各給水所では2つずつもらって飲むが満足できない。
右ふくらはぎが攣りそうだ! ケンケンでも時速10kmで走ってもらうぞ!と
痛みを堪えながら走る。
意識は朦朧としている。距離の指示標識の間隔がおかしいのではとか考えていた。
その内、ゼッケンに4時間と書いている選手に抜かれた。
4時間のPace makerか!
これに離されたら4時間切りの夢が消える。
必死に必死に食らいついていく。速い。
5分30秒時速11kmの速度を維持するのは今や無理だ。
このpaceに徐々に離され、ついに姿を見失う。
だが、まだ貯金はあるはず。時速10kmを維持できれば!
回りもサブ4目指して、歯を食いしばって必死に走っている。
歩いている者も増えてきたが目指す者は必死に手と足を動かしている。
何人か抜き、何人かに抜かれ、「あと少し!もうじきゴール!」という声に
「嘘つき!まだまだやんけ!」と毒づきながら競技場が見えた。
大丈夫、まだ5分ぐらいは余裕があると思いつつラストスパートと思ったが無理。
ゴール直前両手を上げて走っているふりをするのが精一杯。
GPSは54分台。
tipを引きちぎって返却し、速報票をもらい3時間54分台を見たとき、大きな溜息がでた。
これで終わりに出来るわ。奈良棄権の呪縛は解けた。
例によってロボコップのようなぎくしゃくとした動きで更衣室へ。混み合ってくるから
とにかく早く着替えてからストレッチ。痛い。。。
おもてなしのうどんも疲労で食べられず水のみ。
駅に戻り、一番早いバスの席を購入してコンビニでビールと焼き鳥一本。
駅前のベンチで食べた美味しさの感動と共に僕の徳島マラソンは完了した。
体は重いが、自らに吐いた呪いが解けた心はとても軽くなっていた。
これからは楽しい走りだけを目指そう。(^^)
