怒るのって意外と気力が必要。
いつまでもキープするのって大変。
そういうわけで、一晩寝たらすっかりきのうの怒りを忘れてしまった。
きっとロベルトも相当深く反省しただろうし、会って話を聞いたら、笑って許してあげよう!
今日は来客がいつになく多くて、あれやこれや、といううちに時間が過ぎていった。
それにしてもロベルトは?
きのうのことはもう怒っていないけど、電話がないことでまた新たに苛立ちが沸いてきた。
本当にいつもこれだ!
家で待つ気にもなれなくて、遊びに来ていた日本人の子を途中まで送りに行った。
彼女と別れた後、気分転換に街にでも出よう、と思ってバスに乗った。
ドアを入ってすぐ右手の、ちょうどドアを出入りする人がよく見える席に座った。
発車前、あわてて一人乗り込んできた。
その横顔に見覚えがあって、
「この人どっかで会ったかもしれないな」
とぼんやり思った。
こっちを見てにっと笑いかけられて、やっと気づいた。
ロベルトだった。
トランクを持ってたから、ミュンヘンに帰るんだってことが分かった。
この偶然の事態にうまく適応できない。
笑うことも、怒ることもできない。
どう反応していいのか分からなかった。
そんなあたしをよそに、ロベルトはきのうのことを謝ってきた。
でもきのうの電話の神妙さはなく、一応それにも触れなきゃ、という感じ。
「こんなことはもう何があっても起こらない。ごめんね。」
笑って言うから、開き直ってるみたいに見えた。
すぐにバスは終点について、ロベルトは電車に乗り換えて中央駅に行く。
駅まで送ろうか、って迷ったけど、ここでひょこひょこついて行ったら、ロベルトを許したみたいになる。
それに抵抗があって、しばらくためらってた。
そしたら
「もう時間がない。電車に間に合わなくなっちゃう。」
って言ってあっさりバイバイ。
何もかもがは?という感じだった。
あんな人の何が好きなんだろう。
あの人にとって彼女ってなんなわけ?
なんだかすべてがばかばかしくなってきた。
しらけた気分で、何も考えられないままに街を歩く。
パン屋さんの前で突然、
「キム!」
って声をかけられた。
振り向くと、全然知らない30代くらいの男の人。
話を聞くと、近くの中華料理店で働いてる別の人と間違えたみたい。
しばらく立ち話をして、方向が一緒なら一緒にしばらく歩こうって誘われた。
ちょっとだけ歩いて別れようとしたら、コーヒーでもどう?って誘われた。
めんどくさいな、と思ったけど、今はすぐ家に帰りたくなかったし、誰かとしゃべって気を紛らせたかったから、オーケーした。
近くのカフェに入ってカフェオレを頼む。
音楽も照明も最悪だったから、カフェオレのおいしさに驚いた。
彼はマークといって、クロアチア人とイタリア人のハーフらしい。
親がたぶんドイツに出稼ぎに来ていて、彼はドイツで育ち、ドイツで働いてる。
またアレックスのときみたいになるな、と話しながらちょっと後悔。
でもアレックスは教養があって、人格も信頼できた。
彼は職業も電気関係の修理だし、失礼だけどあまり品を感じなかった。
もともとへこんでいる上に、相手がそんな感じだからもうやる気なし。
出会いの分だけ発見がある、をモットーになるべく多くの人と関わろう、と思っていたけど拒否感が出てきた。
携帯を聞かれたけど、家に忘れたし、しかも番号覚えてないってごまかした。
そしたら家までついてきて(送ってくれて)、
「携帯をちょっととってきなよ、ここで待ってるから」
だって。
うげ、と思ったけど、ここで待たせるわけにも行かず、しぶしぶ一度家に変えるポーズをとり、もう一回出て行った。
結局正しい番号を教えてしまった。
「明日連絡する。明日用事があるならあさってでも。じゃ、また会おう」
って行って帰っていった。
しまった、またやっちゃった・・・。
めんどくさいなあ。
こういうことってよくあるけど、いつも直感的に拒否反応が出る。
でもロベルトの場合は不思議にまったくそれがなかったのに改めて気づく。
ロベルトに対してだんだんむかついてきた。
「なめんじゃねえよ!」
と一言言ってやりたくなってきた。
気づけばあたし、いつも待ってる。
ロベルトが来るのを、ロベルトが電話かけてきてくれるのを。
そしていつも待たされて、忘れられて、失望させられてる。
いい加減しろ。
もう二度とごめん。
ロベルトが帰ってきたらどうしても言ってやらなくちゃ。
今はまだ何をどう言えばいいか、まとまらないけど言いたいことは一つ。
あたしをもっと尊重しろ!