今年と来年は、2年連続の「マーラー・アニヴァーサリー・イヤー」ということで、世界中で数々の意欲的な催しが行われることでしょう。

 そして、当然、数々の興味深いCDや映像ソフトが出されることでしょう。

 うれしい悲鳴を上げることがたいへん多くなりそうで、恐ろしくもあります。

 

 ところが、その、2年連続の「マーラー・イヤー」が始まったばかりだというのに、いきなり、この3月にこれ以上に注目すべきものはないのではないか、いや、「注目すべき」などと言うと、ただ珍しいだけというように思われてしまうのかもしれませんから、もっと端的に言ってしまいますが、これこそは、


・すべてのマーラー好きが聴かなければならない

・少しマーラーに興味を持っている人も聴いてみるべき

・マーラーに反感を抱いている人の心にもしみいるに違いない


というCDが出ます。


アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど

 昨年の春から親しくしていただいている、スウェーデンの里の猫様 のCDレーベルMUSICA REDIVIVA から出る


オルガン伴奏による Mahler Songs


 という画期的な、世界初の試みによるCDです。

 マリア・フォシュストローム:アルト/ヨハネス・ランドグレーン:オルガン/MRSACD-018


 スウェーデン、イェーテボリ市内のヴァーサ教会で2009年10月12日~15日に録音されました。

 この教会のオルガンは1909年に作られたものです。


曲目は、

Ⅰ、亡き子を偲ぶ歌

Ⅱ、リュッケルトの詩による5つの歌曲

Ⅲ、交響曲第2番より「原光」

Ⅳ、『大地の歌』より「告別」


 マーラーの、アルトとオーケストラのための歌曲を、オルガン伴奏という形で演奏するという素晴らしい考えを、このCDの2人が抱いたのは2007年秋のことでした。

 それから2年間かけて練り上げられた成果が今回のこのCDです。

 ここに選ばれているマーラーの歌曲のもっている意味が、オルガンという「神聖な音楽を表現するための楽器」(CDの解説書の言葉)によってより深められているのではないでしょか。

 このCDに収められている曲にはどれもマーラー自身によるオーケストラ版とピアノ版がありますが、オルガン版の編曲にあたってはピアノ版に基づき、オーケストラ版も参考にされているとのことです。

 ただ、最後の「告別」は、オーケストラ版に基づいているようです。冒頭の、タムタム、ハープ、ホルン、コントラファゴットが作り出す響きを、オルガンがどのように表現しているか、非常に興味深いですね。

 それに何よりも、『大地の歌』の歌唱といえばシャスティン・トールボリィの不滅の名演がいくつも残されているわけですから、その後輩にあたるマリア・フォシュストロームの歌唱も大いに期待できると思います。


 このレーベルのCDは、いつも隅から隅まで心のこもった丁寧な作りになっているのですが、今回は、いつにも増して美しいジャケット・デザインです。

 この美しい空の色が、あたかもこのCDに収められている音楽の姿をそのまま表現しているかのようです。


 スウェーデンでは、この数日のうちに発表される予定ですが、日本で手に入るのには今しばらくかかるようで、一日も早く聴きたいものです。

 なお、HMV左矢印リンク)では予約が始まっています。


(ジャケット写真は里の猫様の許諾を得て、掲載させていただきました)