こんにちは、犬の管理栄養士です。
今日の内容は今年1月に愛媛大学の研究チームから発表された、非常にショッキングな論文(調査結果)に関する8回目となります。
要約(原文)をご覧ください。
【論文要約】
結論:魚ベースのリスク
ウェットフード(レトルトなど)の分析でも、ドライフードと同様に「肉」か「魚」かによって汚染の差がはっきりと現れました。
魚の体に汚れが溜まりやすいことは、海や川の食物連鎖を通じて証明されており、人間にとっても魚介類は主要な汚染源の一つとして特定されています。
欧米ではすでに、魚の摂取量に基づいた厳しい基準値が設けられていますが、同様の基準はまだペットには存在しません。
魚をメインにしたご飯を毎日食べ続けることは、知らず知らずのうちに安全な限界量を超えてしまうリスクをはらんでおり、今後、動物たちに合わせた専門的な調査が急務となっています。
まとめると:
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海由来の材料(魚など): 海洋汚染の影響を直接受けており、特に特定の成分(PFUnDAなど)が高濃度になりやすい。
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穀物由来の材料: 汚れの原因はまだ不明な点も多いが、混ぜられた魚成分や、製造工程・農薬などからの汚染が疑われる。
3.5 従来の汚れ(POPs)とPFASの違い
今回の調査で得られた「PFAS(ピーファス)」の数値を、これまでに規制されてきた「古いタイプの有害物質(PCBなど)」と比べたところ、両者の間に関連性は見られませんでした。
かつての有害物質は、主に「脂肪」に溜まりやすい性質を持っていましたが、PFASは「タンパク質と結びつきやすい」「水に溶けやすい」という独自の性質を持っています。
つまり、「脂っこいから危ない」というこれまでの常識は通用せず、PFASは全く別のルート(最近の産業活動や材料の組み合わせ)でご飯に紛れ込んでいることが分かりました。
3.6 健康リスクの検討:なぜ「ウェットフード」が危ないのか?
食べる量のマジック
今回の調査で最も注目すべきは、「成分の濃さはドライフードの方が高いのに、実際に体に入る量はウェットフードの方が多い」という結果です。 その理由は、1日に食べる量の差にあります。
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ドライフード: 栄養が凝縮されているため、食べる量は少なくて済みます。
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ウェットフード: 水分が多く、お腹をいっぱいにするためにドライフードの数倍の量を食べる必要があります。
この「食べる量の多さ」が原因で、薄いはずの汚れが体に大量に蓄積され、結果として計算上の危険度(危険度指数:HQ)はウェットフードの方が高くなってしまいました。
多くの製品で、一生食べ続けても安全とされる目安を超えており、健康への影響が懸念されるレベルにあります。
【私の知見:ウェットフードに潜む『蓄積』の正体】
今回の論文が明かした事実は、私たちの「良かれと思って」という愛情が、皮肉にもリスクを底上げしていた可能性を示唆しています。
特に注目すべきは、これまでの有害物質の常識が一切通用しないという点です。
■ 「脂抜き」では逃げられない、PFASの執拗さ
かつての有害物質(PCBなど)は、主に「脂肪」に溜まるものでした。
しかし、PFASは違います。
PFASは脂肪ではなく「タンパク質」と結びつくのです。
つまり、お魚の「身(筋肉)」そのものに強固に吸着しています。
脂を取り除いても、水分にさらしても、PFASはそこにとどまり続けます。これは、原材料そのものが「どこで、どう育ったか」が、これまで以上に重要性を持つようになったことを意味します。
■ 陥りやすい「薄さ」の罠:ウェットフードの盲点
今回の調査で最も衝撃的だったのは、「汚染濃度が低いウェットフードの方が、結果的な健康リスク(HQ)が高かった」という矛盾です。
その理由は、あまりにも単純で、恐ろしいものでした。
それは「水分が多いウェットフードは、お腹を満たすために大量に食べなければならない」という、食べる量のマジックです。
1gあたりの汚染が少なく見えても、ドライフードの数倍の量を毎日、一生涯食べ続けることで、体内に蓄積される総量は安全な限界線を容易に突破してしまいます。
これは「PFAS濃度が薄くても、全部食べれば同じ」という、私たちがつい見落としてしまいがちな罠です。
■ 私たちが「今」すべきこと
論文を読み解くと「お魚は体に良いから」「水分を摂らせたいから」と選んでいたウェットフードが、実は知らず知らずのうちに愛犬・愛猫の体に負担を強いていたということになります。
ですが、私は絶望していません。
この「食べる量のマジック」があるからこそ、「汚染のないクリーンな原材料」を選ぶことの価値は、数倍にも跳ね上がるからです。
だから一生涯食べ続けても安心だと言い切れる、嘘のない「安全な食材選び」を。
PFASが脂肪ではなくタンパク質に宿る以上、これまで以上に、原材料という「命の源」を厳格に、執拗に選び抜かなければなりません。
今回は愛犬・愛猫の体をつくる食事について、改めて問い直される結果となりました。
次回は、これほどまでに深刻な汚染が広がる中で、私たちはどうやって食事を選べばいいのか?
論文から見えた『汚染を避けるための具体的な手がかり』、そし『て私たちが進むべき道』についてお話しします。
最後まで読んでいただき感謝でいっぱいです。