秋の味覚の王者--松茸。食べたいけれど、国産モノはお値段が高くて、庶民が口にできるのはせいぜい風味が劣ると言われている輸入モノ。でも、いまだ人工栽培はできないらしく、もし可能になったら、もっと気軽に風味豊かなマツタケを食べられるようになるはず。
そこで、マツタケの人工栽培化研究をしている。近畿大学農学部の
寺下隆夫教授に聞いてみた。やっぱりマツタケの生育環境は、人工栽培できないくらい温度や湿度などの条件が厳しいんですか?
「マツタケは、地中温度が25℃前後の時に地中で成長し、19℃まで下がって水分が地中までいきわたると一気に地表に顔を出します。こうした条件は他のキノコと比べても厳しすぎることはありません」
では、一体なぜ栽培ができないのかというと、「マツタケは自分の力で育つことができないから」だという。「椎茸や
エノキなどとは違い、マツタケは自身で宿主樹木の成分を分解して栄養素に変える酵素をほとんど持っていません。アカマツ
など宿主樹木が光合成
よって得た栄養素をそのまま貰って育つんです。この状況は人工的に作り出すことができません。また、マツタケの菌は非常に弱く、他の菌が繁殖しない貧相な土地でしか生きていけません。こうした事情で、現時点では栽培が困難なのです」
将来的には人工栽培は実現しそうなんですか?
「マツタケ同様の生態をしているホンシメジ で は、自力で成長できる力を持っている種類が見つかったため、人工栽培が実現しました。ですから、マツタケにもそういう種類があるはず。時間はかかると思い ますが、いずれはできるようになるでしょうね。ただ、人工栽培に頼らずとも、松林の環境を改善すれば、自然に生育するマツタケも増えるはず。そうすれば、 少しは国産マツタケの収穫量も増え、入手しやすくなるのではないでしょうか」
実は、以前はマツタケはもっとたくさん収穫されていた。しかし、時代とともにマツが枯れたり、林床が冨栄養化して、マツタケが生息しにくくなってしまい、収穫量のピークだった昭和初期と比べると現在は0.3%まで落ち込んでいる。松林の環境がかつてのように“マツ タケ向き”に戻れば、増加が期待できるが、それはそれで気の長い話になりそう。人工栽培の実現と、どっちが先になるかはわからないけれど、やっぱりボクら が思う存分国産マツタケを食べられる日は、まだまだ先になりそうだ。