中学受験 いつまで過熱が続くのか? 今後の受験者数の予測推移からの考察。
「少子化だから、中学受験もそのうち落ち着く」そんな話をよく聞く。確かに、子どもの数は減っている。だったら、中学受験をする子どもの数も減っていくはずだ。これは間違っていない。しかし、ここで一つ考えなければならないことがある。受験者数は、子どもの数だけで決まるわけではない。「受験率」があるからだ。受験者数は「子どもの数×受験率」中学受験の受験者数を考えるとき、 受験者数 = 6年生人口(卒業生数) × 受験率 と考えればいい。 子どもの数が減っても、受験率が上がれば、受験者数は減らない。実際、首都圏模試センターのデータによると、首都圏(私立・国立中学)の受験率は長い間上昇してきた。 2000年代前半は13〜15%程度だった受験率は、 2004年: 15.18%(4万4,500人) 2006年: 16.27%(4万7,800人) 2007年: 16.45%(5万0,500人) 2008年: 16.57%(4万9,000人) と上昇し、2007年〜2008年ごろに当時の「中学受験バブル」のピークを迎えた。その後、リーマンショックなどの影響で一時下降したものの、近年は再び急速に上昇。 2023年: 17.86%(5万2,600人) 2024年: 18.12%(5万2,400人) 2025年: 18.10%(5万2,300人) 2023年〜2025年は、過去最多(5万2,000人台)の受験者数を記録し、2000年代のバブル期をも上回る史上最高の過熱期となっている。「少子化だから受験者数が減る」は、すぐには起こらないここからが重要だ。 今後、首都圏の受験率が現在の 18.1%前後 で高止まりすると仮定する。 そうすると、少子化によって6年生の人数が減れば、受験者数も少しずつ減っていく。首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)の小学6年卒業生数(人口見込み)は以下の通りだ。 2025年: 約28万9,000人(288,951人) 2026年: 約28万7,400人(287,377人) 2028年: 約28万7,300人(287,301人) 2029年: 約27万7,900人(277,894人) 2030年: 約27万0,300人(270,258人)受験率を 18.1% で計算すると、今後の推定受験者数は次のようになる。 2026年: 約5万2,000人(人口28.74万人×18.1%) 2028年: 約5万2,000人(人口28.73万人×18.1%) 2029年: 約5万0,300人(人口27.79万人×18.1%) 2030年: 約4万8,900人(人口27.03万人×18.1%)確かに減っている。 しかし、2030年になっても5万人近く残るのである。 これはかなり重要な数字ではないだろうか。2000年代の「過熱期」と比べても、まだ多い過去の受験者数と比較してみよう。 2004年: 約4万4,500人 2006年: 約4万7,800人 2007年(当時のピーク): 約5万0,500人2026年〜2028年予測の約5万2,000人という数字は、2000年代バブルの頂点だった2007年(5万0,500人)よりも依然として多い。 そして、本格的に人口減少が影響してくる2030年でも約4万8,900人となり、2006年ごろ(4万7,800人)と同等の高水準を維持していることになる。では、いつになれば「落ち着く」のか?ここで「落ち着いていた時代」として、2000年代前半の 4万4,000〜4万5,000人前後 を考えてみる。 (※2003年:4万2,500人、2004年:4万4,500人、2011〜2012年:4万5,000人台)現在の約5万2,300人との差は 約8,000人 である。 受験率が18.1%で高止まりし、少子化による人口動態だけで減っていくなら、この差は一気には縮まらない。 2028年までは人口減少自体が非常に緩やかだからだ。人口減少が加速する2029年以降(年間約1,500〜1,800人減)、受験者数の流れを追うと次のようになる。 2025〜2028年: 約5万2,000人前後(過去最高規模の横ばい) 2029年: 約5万0,300人 2030年: 約4万8,900人 2033〜2035年ごろ: 約4万5,000人前後つまり、2000年代前半の落ち着いた人数(4万5,000人前後)まで戻るのは、2030年代半ば(2035年ごろ) になる。 少子化が進んでいるからといって、中学受験者数がすぐに4万人台前半まで落ちるわけではないのである。受験率が上がれば、さらに減らないしかも、これは受験率を「18.1%」で固定した場合の話だ。 もし今後も受験率が上昇すれば、受験者数の減少はさらに緩やかになる。たとえば、子どもの数が減っていても、 「高校受験より中学受験のほうがいい」 「大学受験を考えるなら中高一貫校がいい」 「公立の教育環境への不安から選択したい」 という家庭が増えて受験率が上がれば、少子化による人口減を完全に相殺してしまう。だから、「少子化 = 中学受験の過熱が終わる」 ではない。 受験率が上がっている間は、少子化でも受験者数は増えるか維持される。ただし、受験率も永遠には上がらない一方で、受験率が永遠に上昇するとも考えにくい。 首都圏全体で18%を超え、東京都単体で見ればさらに高い。 ここから毎年大きく上がり続けるとは考えにくい。だから、ある時点(2030年前後)からは、受験率の上昇よりも少子化の影響(人口減)のほうが大きくなる。 その結果、受験率が高いままでも、受験者数はゆっくりと減っていくことになる。「過熱」は人数だけでは決まらないそして、もう一つ重要な視点がある。受験者数が減ったからといって、すぐに「中学受験が楽になる」とは限らない。例えば、全体数が5万2,000人から4万8,000人に減ったとしても、人気校や難関校に受験生が集中すれば、競争の激しさは変わらない。 さらに、首都圏模試センターのデータを見ると、近年は併願校数(1人あたりの平均出願校数)が増加傾向にあり、2025年には過去最高の 7.44校 に達している。 受験生1人が受ける校数が増えているため、学校側の「のべ志願者数」は高止まりし、実質倍率が下がりにくい構造ができているのだ。2030年代前半までは過熱期が続く少子化を理由に、「中学受験はそのうち自然に楽になる」と考えるのは時期尚早だ。受験率が高止まり(約18.1%)する場合、 2020年代後半(〜2028年): 5万2,000人規模の過去最高水準が続く。 2030年代前半(2030〜2032年): 5万人前後の過熱期と同等の規模が残る。 2035年ごろ: ようやく2000年代前半の落ち着いた人数(4万5,000人前後)に戻る。少子化による自然減だけでは、中学受験の環境はすぐには変わらない。 「少子化だから、そのうち落ち着く」と楽観視せず、「2030年代前半までは過熱状態が続き、緩和には2035年頃までの長い時間軸がかかる」と捉えておくのが現実的である。しばらくは過熱してるということだ。