寛太さん

『ねえ、何で昨日、黙ってそっと帰っちゃったの?泊まって行くと思ってたのに』

電話中だったので。。

泊まりません。

アケミさんは来れそうですか?

『何か、この間アメリカから帰ったばっかりだし、仕事もあるしって言ってた。自分の計画を変えられるのが好きじゃない人だからね』

あんな大きな事故に遭って
こんなにアケミさんを恋しく思っているのに何で?

事故からもう数週間

寛太さんの身の回りのお世話も
必要なくなってきてる。


でも
お世話じゃなくて
ただ寛太さんの所へ行ってあげたら
どんなに喜ぶか。

アケミさんにしか出来ないじゃない



そう思った

でも、その反面

すぐ来てあげないアケミさんへの
不信感や怒りも湧いてくる。

心配じゃないの?

そばに居たいと何で思わないの?


私のお腹の赤ちゃん。。。

この子の為に

サリーは行動を起こさないと。


誰かに相談したい

誰に?


サリーの頭に浮かんだ人


それは、サリーママだった。


サリーと
サリーの弟と妹を置いて

近所の男と浮気して

離婚したサリーママ


その後も

ママにどれだけ振り回されたか

預けられてた祖母の家でも
叔父に散々イジメられた。

祖母も叔母も
辛い思いをした。

弟は両親が離婚する時

『僕はパパとママ
どっちも選ばない! 選べないんじゃない、絶対選ばない! 』

そう言って、お風呂で泣いているのを見た。


ママを最も恋しがった

小さかった妹は

喘息の発作に苦しんでた

『苦しいよ、息が吸えないよ』

泣いて訴える妹

大丈夫だよ、大丈夫!

そう言いながら、おんぶして

病院に担ぎ込む度に

サリーはママが憎かった。


弟にも妹にも絶対に会わせない!

許さない!


そう思っていたのに。


今、不安なサリーの頭によぎる人は

ママだった。


電話してみた


『どうしたの?』

良かった! あの男が出たら直ぐに
切ろうと思っていた。

あのね、私、妊娠したの。

『え? どういう事?』

事情を話すサリー

そして、寛太さんには言いたくない
理由も話した。

『その人に、恋人がいる、いないは
サリーじゃなくて、赤ちゃんには関係ない! 間違いなく、その寛太さんと言う人は赤ちゃんのお父さんなのでしょう? サリーには1人で決める権利は無いのよ、寛太さんにも知る権利がある。』

なるほど

そう思った。

サリーのお腹の赤ちゃんは
サリーだけの所有物と勘違い
していた事に気が付いた。

でも、

赤ちゃんが理由で
アケミさんと別れて
サリーを選ぶのが嫌

きっと寛太さんは
アケミさんと別れる

サリーを妊娠させたから。
赤ちゃんがいるから。

そんな理由は
サリーも赤ちゃんも
悲しい

だから言いたくなかった


でも、サリーママが言う、
寛太さんにも知る『権利』がある

これは考えもしなかった。

分かったよ、
明日、寛太さんに伝える


『サリー、強くなりなさい』


そう言って、
ママは電話を切った。



続く