「大鏡」は作者不詳です。藤原道長の栄華を中心にして文徳天皇即位の嘉祥3年(850年)から後一条天皇の万寿2年(1025年)までの14代176年間の宮廷の歴史を記述した歴史物語です。大宅世継(190歳)と夏山茂樹(180歳)、二人の長命な老人が雲林院の菩提講で語り合い、若侍が批評するという対話形式で書かれています。後一条天皇は紫式部が出仕した中宮彰子が産んだ皇子です。

清少納言が出仕した中宮定子所生の敦康親王を皇太子とするよう父道長に中宮彰子が強く主張しましたがかないませんでした。彰子にとって定子は亡くなっているとは言え恋敵、その定子所生の敦康親王を皇太子にと進言したのは心穏やかな性格だったと思われます。

 

村上天皇の中宮安子は嫉妬深い女性として「大鏡」に描かれています。

安子は右大臣藤原師輔の長女。道長の父藤原兼家の姉に当たります。冷泉天皇、円融天皇の母、国母です。円融天皇は「光る君」で坂東巳之助さんが演じています。吉田羊さんがその妻藤原詮子を演じています。詮子は円融天皇から冷たく扱われています。

安子は村上天皇の寵愛を受けた宣耀殿女御藤原芳子(安子の従姉妹)の美しさに嫉妬心を抱き、壁の穴から土器(かわらけ)のかけらを投げつけたというエピソードがあります。村上天皇が立腹し、安子の兄弟に謹慎を命じます。後日、安子は村上天皇に兄弟の処分を返上させます。