芥川龍之介の名作「トロッコ」の舞台が石橋山合戦場跡地から目と鼻の先、ということで。

 

 

こちらの本を参考に、とはいえ昔の線路跡を歩くことは不可能なので、旧道をドライブしてみました。

 

バイパスは大渋滞で、これを避けて旧道を飛ばすバイク多数。

ほぼ煽り運転に近いような連中を無視してマイペースドライブを続けるのはかなりの精神力が必要である。

 

地図。

 

 

 

一度真鶴まで行き、そこから戻る格好で「トロッコ」の主人公・良平少年の気持ちに沿ってみた。

 

おそらく良平くん、この真鶴に住み、郊外の線路の工事を見に行ってトロッコに憧れたのだと思う。

こういった肉体系の仕事、小さい男の子であれば「カッコいい」と思ってしまうのではないか。うちの兄貴も、ゴミ収集車の動きやドライバーのキビキビと動く姿にあこがれ、あの仕事をしようと思ったことがあるそうだ。

 

真鶴から緩やかに坂を上り、岩地区へと。

トロッコを押す男たちとともに彼はこの坂を必死に登っていく。そして頂上と思われるのが岩である。

 

 

ここから坂は下りとなる。良平くん、男たちと一緒にトロッコに乗って勢いよく下る。今でいう絶叫マシーンみたいな感覚でしょうか。

そんなオレも、「我がトロッコ体験」の新坂をのちに再訪し、ここを自転車で下るスリルを味わったものである。

 

 
ところで、「トロッコ」を読んだ時ですが、何となく直線の道で規則的な勾配だったように想像していたのですが、実際に行ってみると道は曲がりくねってるし勾配もきつくなったり緩くなったり。自然の地形なんだから当たり前なんだよな。。
 
トロッコは再び坂を上ります。真鶴から岩まででもすでに2キロはあり、しかも現代と違って人家もなく山林ばかり。

だんだんと遠くなることを良平くんは意識し始めます。

 

 

赤沢地区に来ました。

 

「広々と薄ら寒い海が開けた」

 

 

心細さが伝わってくる文章です。しかし良平くん、一緒にいるおじさんたちと一緒に帰るから…という気持ちで同行を続ける。

再び坂を下ったのは江之浦の南側でしょう。ここでお菓子を貰うのですが、包み紙に使われていた新聞紙の灯油のにおいが染みついているシロモノ。おじさんたちは親切なのだが気配りがないようだ。

 

 

再び坂を上る。小田原文化財団近くで撮影です。道は再びここから下り、小田原市江之浦地区の北端までやってきた。

真鶴からすでに5キロはあるでしょうか。

 

ここで「もう帰りな」という言葉に、現実を突きつけられた良平くん。おじさんたちも早くそれを言ってくれよと言いたくもなるが、とにかく意地悪ではないが気の利かない人たちには違いなかった。

 

こちらはコーヒー飲みながらの快適なドライブですが、良平くんの帰り道は大変だ。

もう夕暮れが迫り、人家のない山林を一人で歩いて(走って)帰らなければならない。徒歩で子供の足なら一時間半はかかるところ。当然道は舗装されているはずがなく、灯かりもない。

 

こうして考えると、良平くんはどのくらいの時間、心細い帰宅の道にいたのでしょうか。時々息をきらして立ち止まって休んだのかもしれない。5~6キロも走るなんて子供の足では大変なことです。

 

自分自身が良平くんになることは出来ませんでしたが、その舞台を見たことで芥川龍之介の世界をわずかながらも実感できたかも知れません。

 

 

さて遅めの朝食。小田原の駅伝復路コースを運転しながら、見つけたのがこちらのファミレスでした。

 

 

酒匂IC近くのデニーズ。旅行でファミレスというと笑われるのだが、そのほうが気楽でいいんですよ。

 

 

モーニングセット。

 

 

ヨーグルト。

 

 

ドリンクバー。

 

 

しばしの休息です。

 

なんの変哲もない道路をドライブしただけですが、文学の世界に入って、現実には見えないものが見えました。

考え方ひとつで同じ景色でも全く違ったものに見えるものなんですねぇ。