のびやかに青空を渡るかもめを思わず目で追ってしまう。
かつての休日の喧騒が嘘のように引いた、ことに平日のお台場は、
今日のように晴れ渡った日には、自然と足が向いてしまう場所になった。
不安定なお天気が長く続いた後の、ようやくの一週間ぶりの、光にあふれた日。
昼下がりのティータイムを楽しむため、デックス東京ビーチにやってきた。
昔ここができたての頃は、人であふれていたことを思い出す。
今はお台場の商業施設はずいぶんと増えて、この場所は観光スポットとしては古株と言えようか。
今でも多くの観光客が訪れているに違いないが、
私にとってはありがたいことに、平日は人がまばらで、
本当に落ち着いていられる場所となった。
晴れた日は何より景観がいい。レインボーブリッジと東京タワー、
高層ビル群を目の前に、潮風にあたりながら空と海の青さを感じて歩くと
自然と開放的な気分になる。
ところどころ、外のスピーカーから流れるボサノバやハワイアンが
より気分をなごませてくれる。
外気にさらされる席ではまだ少し肌寒く思ったので、
屋内のカフェの一つに入り、窓辺の席で本を読みながら時間をつぶす。
気がつくと、いつの間にか夕刻が忍び寄っていたらしい。
目の前に見えるビルのところどころが、
まるで金箔を貼り付けたように輝いている。
夕方の自然光と人工物のコラボのとも言えるこのとびっきりのゴールドは、
都市ならでこそ映えるのかもしれない。
しかし、この日のゴージャスな色の収穫はこれだけではなかった。
ビルの向こうに沈みゆく太陽、それを眺めながらはっと気がついた。
夕日の周りに大きく虹色のような半円ができているのだ。
(これは後でニュースで知ったが、水蒸気の多い春に多く見られる光環という現象らしい)
太陽をまじまじと見ていた私だからたぶん気がついたのだ。
周囲の人で気がついている人は多くなかったに違いない。
思いがけなく神々しい風景を目にしたことで、自然と顔はほころび、足取りはかろやかになる。
そしてさらに、そんな自然と都市建造物の共演で醸しだされる、
フィナーレの色を見つけて、また心の中でひとり歓声をあげたのだった。
レインボーブリッジがなんと美しい桜色に染まっていたのだ。
晴天の日とはいえ、冬のキリリと澄み渡った大気とは違う、
よりやわらかな空気がこの季節にふさわしい色を作り出したのだ。
そういえば、太陽が沈んで影になりゆくビルの色もほんのり赤紫がかっている。
まだ本物の桜の花はかたい蕾のままだけれど、
もうまもなくやってくる桜の季節を告げるような、
自然の粋な演出と言えなくはないか。
勝手にそう決めこみ、ひとり盛り上がった早春の宵であった。
(2016年3月中旬のある日)