国立市にあるアトリエ「ルーチェ クラッシカ」のデザイナー光田みどりです。

 

 

姉が14歳の頃に親戚の結婚式に参列した時に着た振り袖。

 

後ろのご婦人方を見ると、当時の結婚式はほとんどの女性が着物姿だったのですね!

 

 

母はこの日は結婚式の裏方のお手伝いだった模様。娘の晴れ着姿の姉に嬉しそうな父。

 

幼い頃に藤のお花に憧れたのは、着物姿に合わせるかんざしの優美さの影響だ...と思い出しました。

 

 

この時の振り袖は、その当時のままタンスの奥にしまわれていました。

image

 

長い年数眠っていた着物も、腕の確かな職人さんのおかげで目の覚めるような美しさによみがえりました。
image
 
着物リメイクの仕上がりを着用したのは姉の次女。姉と共にいつも母を支えてくれている明るくほがらかな姪です。
image

 

この着物をどんなデザインにしたい?との問いに
姉は「今っぽいデザインに」姪は「細く見えるもの」ということでおまかせでした。
 
胸元に深めのスリットが入ったビスチェドレスは、時代が変わっても色褪せないシンプルなデザインに。
image
 
振り袖の持つ華やかで大胆な柄を生かしてシンプルなシルエットをイメージして制作を進めていましたが、10月末に知り合ったばかりのお友達のKikueさんが誘って下さった「古い時代のイギリスのドレスを解体した展示」を観て、インスピレーションを受け、後ろ姿に特徴のあるバッスルスタイルのデザインに。
image
 
その展示で感銘を受けたのは、それまでのロココ・スタイルのドレスは、まだまだ生地が貴重な時代で、着物と同じくヨーロッパのドレスも極力はさみを入れずにほどいた後に再生できるように裁断されていたこと。
 
産業革命後に素材が豊かに入手可能になり、1850年代にバッスル・スタイルが生まれた時に初めてダイナミックなカットをされ、現在に至っているということでした。
 
 
その時代の変わり目の象徴ともなったバッスル・スタイルは、腰の位置を高くし、ヒップを強調した女性らしいシルエット。
 
その時代や裁断の革命ともなったスタイルに敬意を込めて、急遽振り袖ドレスのデザインポイントとすることに決めました。
 
image
 
女性らしい曲線美が、ドレスの最も得意とするところ。
立体裁断を行うことで、和服の帯のような表情に仕上げました。
フリルの長さや幅繊細な表情に自由に表現できるのもやりがいを感じます。
 
image
 
世界中で持続可能性を考えられた布の裁断が当たり前だった200年前。
 
ものが溢れ時代が変わっても、日本では着物を仕立てる際にほどくことが前提になった手縫いをすることや、洗い張りという技術が受け継がれ現在でも続いているのは、日本人の心の豊かさと、ものに対する敬意が込められている証だと改めて感じています。
 

image

 
姉にとって中学生の頃の思い出の振り袖が、笑顔を輝かせるドレスに生まれ変わることができたのも、周りの方々の技術と真心のおかげです。本当にありがとうございます。
 

イヤリング制作・Miyuki Abe

 
 
今日もブログを読んでくださってありがとうございました。
 
 

 

ルーチェ クラッシカのサイト