雪峰や朝日に影を折りたたみ

 
 寒い雨ひとり岩屋に立てこもり
 
 氷雨降るわれは氷雨となってゆく
 
 冬帝や木曾の流れへ付知川
 
 紅梅のひらき氷雨の音をきく
 
 岩にきく氷雨に岩の物語
 
 すれ違い出来ぬ橋あり鴨の群
 
 鳩の来て巣をかけるらし梅の花
 
 日脚伸ぶ薄桃色の空の帯
 
 大寒や吾は私の手に負えぬ
 
 何なんだこの世の中は大寒
 
 大根に君の心の白さかな
 
 冬将軍みよ源済の根つけ石
 
 吹きさらす畑に焚火の音踊る
 
 しみついた焚火の匂ひ服を脱ぐ
 
 大寒やとびきり熱い湯につかる
 
 白息や下田歌子の里に住む
 
 幾たりの人と別れてこの寒さ
 
 寒燈を消せば暗闇
 
 カラス知るその大根の白さかな
 
 猛犬に咬まれし夢や春隣
 
 寒厨われは女の敵であり
 
 
 寒卵その豊穣に手を伸ばす
 
 氷山や妻との溝の底知れず
 
 女にはさて冬帝も敵ふまい
 
 すき焼きやかくて家族に感謝して
 
 牛鍋に玉子絡めて舌の上
 
 待春や並木を歩く黒い影
 
 春隣妻の背中のこゑを聴く
 
 嚏(くさめ)して一人密かにうぬぼれり
 
 骨正月聞きなれおらの子守歌
 
 寒梅やついに頭は上げられず
 
 猛犬の夢に手こずる虎落笛(もがりぶえ)
 
 コタツ猫悟りすましてみたきもの
 
 野球部が坂をダッシュや寒風に
 
 悴む手リセットしやうとして止める
 
 突風を一旦断ちて吹雪かな
 
 静寂は沈黙となり雪積もる
 
 うぬぼれて覗けど歪む厚氷
 
 神さまのおしゃべりなこと雪の朝 
 
 能面に浮かぶ嘲り氷柱かな
 
 渦を巻く二三百羽の寒鴉
 
 極まれば茜雲飛ぶ雪の峰
 
 反転や身を切るやうな冷たさの
 
 極寒や今夜わが家はカレーライス
 
 寒昴夢かうつつか幻か
 骨盤の痛み布団の中にあり
 
 体内の宇宙戦争着ぶくれて
 
 下請けへしわ寄せの増す寒さかな
 
 疑問符の様に寒雲ちぎれ飛ぶ
 
 内職の人の性格くさめ一つ
 
 六花(むつのはな)言葉が光放つとき
 
 雪晴や空の碧さのひと際に
 
 寒茜骨身に沁みる寒さかな
 
 寒カラス風雲急を告げにけり
 
 幸せの王子のツバメ雪に死す
 
 核ボタン一人にひとつ寒昴
 
 丸まれど床に寒氣の入り込みぬ
 
 凍てつくや夢に文枝(ぶんし)の肩をもむ
 
 凍土や青き嫉妬の蛇眠る
 
 三世代交流会や雪の峰
 
 竹やぶの騒ぐ風あり餅を搗く
 
 日脚伸ぶ頬赤らめし白き峰
 
 群舞して浄化を果たす寒烏
 
 心眼のしづかに開く寒昴
 
 寒北斗余白に進化生まれけり
 
 白雪や木曽三川に降りしきり
 
 
 
 美濃尾張こへて異世界雪の華
 
 雪を置く津島神社の赤き門
 
 中山道から東海道へ寒の川
 
 ビーナスの衣はひかり春を待つ
 
 空が割れ時空の外へ月冴ゆる
 
 雪晴や白猫の尾のしなやかに
 
 おかえりと妻のあいさつ冬終る
 
 余白とはわれの事なり寒紅梅
 
 凍星や実は私は宇宙人
 
 冬の果夢で家内の吊し上げ
 
 雪晴や煙いきおいよく昇り
 
 寒月やその裏側の∞
 
 春遠し箍を外して中心へ
 
 一月尽鏡の中の頬の皺
 
 春を待つ怒りの連鎖断ち切りて
 
 冬尽くやただ一振りの太刀となり
 月冴ゆるトタンの波の凸凹に
 
 寒月に地球の影の落ちにけり
 
 月消えて黒い太陽寒オリオン
 
 月蝕の爆発を知る凍土かな
 
 
 
 ぶせふ