つまらない人になります赤トンボ

 

星屑と同じくらいの虫の声

 

穴惑い蛇を絡めて縄をなふ

 

透きとほるただその前の野分かな

 

白々と空の明けゆく野分後

 

あかん おかん やかん みかん どっかん

 

女房の部屋をうろつく穴惑い

 

盗人萩とつじょ主人のお帰りに

 

魚焼く匂ひ日暮れの早くなり

 

キッチンに朝の目覚めの唐辛子

 

白秋や役には立たぬ者として

 

鶏頭やハチャトリアンの剣の舞

 

道端に桃売るガラの悪き人

 

白秋や北斎を見るゴッホ

 

名を捨てて帝育てし草の花

 

稲の香を腹いっぱいに芝居小屋

 

芝居果て涙は虫の音にかはり

 

教服の黒き塊秋日影

 

死人花振り向けば奴がいる

 

秋霖や長い寿限無の名の終り

 

意味ありげな無意味

 

いまここを色なき風の吹くばかり

 

敬老日できれば母を見たくない

 

秋湿り地獄の底の深さかな

 

さみしさの極まればさて暮早し

 

灯火親したぶん仕合せなんだらふ

 

宇宙の音がする 光がうまれる

 

赤トンボ竜骨めいた雲白し

 

家出ナウ不安心配秋の雨

 

うそ寒し名前も家も明日も捨て

 

秋霖や電話のベルの鳴りやまず

 

雨上がり街はすっかり秋の朝

ただいまを叱ってくれる家族あり

 

秋分やスキャンダラスへあと一歩

 

家出より帰りし町の秋祭り

 

世の中はよくわからねど百日草

 

虫の夜信じられないほど静か

 

熊手して朝の目覚めの音を寄す

 

小鳥来て朝の光を散りばめぬ

 

水蜜桃食べる前から唾がわく

 

天と地を引き寄せ結ぶ曼珠沙華

 

待つことの幸せを知る良夜かな

 

名月や君の心の晴れたから

 

ヒカリゴケ二人岩屋の奥のおく

 

瀬戸際に追い詰められて光る苔

 

乙姫の口紅のゐろ浦島草

いふなれば星に恋する虫のこゑ

 

妹の切ないほどの吾亦紅

 

心配をかけたくはなし露の朝

 

これ以上澄みきれぬソラ芋の露

 

秋天や神仏もいきつく処

 

寝待月と云えども月のほかひとり

 

穂芒の穂ススキとして声もなし

 

大木や旧神殿の金木犀

 

台風や人騒がせな誕生日

 

草シラミ誕生日にも朝帰り

 

ぶせふ