定期的に面会している高齢の親戚。
認知症が進んでいて、ほとんど新しいことは覚えられなくなってしまったけれど、子ども時代の話を繰り返し話してくれます。
台詞は若干変わるので、毎回テイクが違う感じですが、内容は同じです。
以前はまたはじまっちゃったと思いつつ、あきらめて上の空状態で相づちを打つだけでしたが、今では毎回きちんと話を聞けるようになりました。
修行のような感じだと思ったこともありましたが、楽しみを見出すことに成功したのです
話の内容は……
穴の中にフクロウが3羽いて、面白いなと思って竹でつついてやったら、3羽が身体を寄せ合っているから、それがよくてつついていると、どこかのお兄さんが来て、「そんなことしたら可哀相だからやめなさい」と言い、お菓子をたくさんくれたという話。
この話が1度の30~60分程度の面会の中で何回出てきたことかという感じ。
そこで編み出したのは、毎回、リフレッシュを装って、異なる返答をしてみるというものです。
たとえば……
Take1:へー、フクロウが! 私は見たことないです。いいですね!
Take2:赤ちゃんフクロウですか? お母さんフクロウはいないんですか?
Take3:フクロウは、よく見かけるものだったんですか?
Take4:つついたら可哀相じゃないですか!
Take5:お菓子をいっぱいもらったら、嬉しいですよね。よかったですね!
Take6:フクロウ、可愛いですよね!
Take7:フクロウって、実は足が長いんですよ!
Take8:どんなお菓子をもらったんですか?
:
:
:
などなど、毎回、異なるコメントをしてみることにしたのです。
そうすると、相手も違う反応をしてくれて、同じ話の繰り返しから新しい話が生まれていくようになりました。
本当に会話ができるようになるんです
これって、エクササイズになっていそうですよね?
相手にとっても、私にとっても、よき頭の体操になり、毎回ちゃんと会話をするという、真摯な接し方もできて、いろんな意味で楽しみになりました。
同じ内容の話の繰り返しも、楽しもうと思えば楽しめるという大発見
壊れたように繰り返される話にうんざりしているという方は、ぜひ、お試しになられてみてください。
ところで、ループの会話でバリエーションをつけてみて思ったのは、スタートレックにも出てきた時空のループの話に似ているということ。
スタートレックでは、全員が吹き飛ばされてしまうか、生き残れるかという、世界をかけたループの中での勝負だったのですが、勝利を目指してリテイクを重ねていました。
失敗をした時、これがループだったらやり直せるのにとか、PC操作のundoのように戻れたらいいのにと思うことがありますが、そう考えると、何度も同じ会話をやり直せるなんて、すごくステキな夢のようなことにも思えてきます。
時空を超えた会話を楽しみながら、自分のエゴを捨てて、これまでの自分も超えていく……
そんな風になれたらハッピーですね