感想は「あー、ひどい。いい映画でした!」以上です(≧▽≦)

「ジェサベル」は、「ソウ」シリーズの編集と「ソウ6」「ソウ・ザ・ファイナル」の監督として有名なケヴィン・グルタート監督の2014年のアメリカの映画です。かなり期待して鑑賞しました。

「ソウ」からイメージすると、グロシーンも満載で見応えありなのではと思ってしまうところですが、スプラッターシーンはなく、ゾンビっぽいものが登場する程度なので、怖いものを見たくない人でも映像的には問題がないのではと思います。※あくまでも私の感覚ではですけれど。

交通事故で恋人を失い、自らも半身不随となり、車椅子生活をする身となったジェシーことジェサベルの知られざる過去に迫っていくストーリーです。

事故のあとに、ずっと離れていた父親と同居することになったジェシーは、亡くなった母が使っていた部屋をあてがわれます。自分を産んで死んでしまった母の温もりを感じつつも、得体の知れないおぞましい存在との生活がはじまるのです。

ところで、タロット占いが登場しますよー! 亡くなったお母さんは、これから生まれてくる子どものためにタロット占いをしたのです。死神のカードが何度も登場し、カップも出てきますが、積み重ねられたタロットの厚みからして、大アルカナ22枚以上、小アルカナ込みの78枚未満にしか見えませんでした。特殊なタロットだったのでしょうか。何のタロットを使っているかは謎ですが、ブードゥーの呪い風なシーンも出てくる作品ですから、ここはちゃんとしてほしいポイントですね。笑

感想としては、悪くはありませんが、もう少し無茶ぶり感を減らせる見せ方ができるとパーフェクトなのではと思いました。映像も美しく、ジェシーが移り住む家の雰囲気も、周囲の景色も魅力的です。


ここからはネタバレ!







理不尽でアンハッピー、救いようのないラストシーンが待ち受ける作品です。これぞホラーの醍醐味だなと思いました。

ジェサベルには、母親の幽霊がつきまといますが、この母親の狂気が最高です。今どきのホラーは、結局はクリーチャー化した母親幽霊の愛に触れて心が生温まる感じの作品も多い気がしますが、せっかくホラーなのですから、意味がわからなくて後味が悪く、不本意であってこその恐怖と失望なのではないかと。

妊娠中に癌と闘病していたママは、お腹の中のジェサベルのために抗がん剤を拒否し、ジェサベル誕生と自分の命を引き換えにする覚悟で出産します。ジェシーは、事故で婚約者を失ったあと、自分への愛のために命を尽くしてくれたママの思い出の詰まった部屋に移り住むことになりました。

悲運なことがあったけれど、心穏やかに過ごせそうですよね。ところが!

実はジェサベルは、ママの浮気相手との間にデキた子どもだったのです。しかも、ママは白人で浮気相手は黒人。白人亭主であるパパは、自分の子どもではなかったことに一瞬で気づくでしょう。生まれたばかりのジェサベルを見たパパは怒り、赤ちゃんジェサベルと浮気相手を殺し、ママは自室で自殺をしました。

「その部屋って、主人公ジェシーが寝泊まりしている部屋ですよね!」という恐ろしいおもてなしだったのです!

こうした過去の背景が、怪奇現象のもとになっていたのですが、とち狂っていますね! パパは殺害を隠蔽するために、殺したジェサベルの身代わりとして血のつながらないジェサベルを引き取り、身代わりのジェサベルが、殺されたホンモノのジェサベルのための呪いの報いを受けさせられるのです。ちなみに、パパも呪いの一環で殺されてしまいました。身代わりジェサベルからすると、偽物のパパとママの因縁につき合わされて、最後は本当に実のジェサベルの身代わりにされてしまったということです。主人公ジェシーは、ラスト間際に、母親の霊とジェサベルの霊と対話して、助けてあげようとしたいたんですよ。「報いを受けろ!」ではなく、「報ってくれ!」という感じ。

ジェサベルは、狂信的にねじ曲がった母性の餌食になりましたが、実際の母親という存在の中にも、クリーチャーが潜んでいるでしょう。「私はママ。立派に子を産んで偉いんだ!」と思ってしまったら、クリーチャー化への危険な一歩を踏み出していいるのかもしれません。自信を持って正しいと思うことを成し遂げるのは素晴らしいですが、それをしている自分は絶対的に正当で立派だと思い込んでしまうと、どんな人でも堕落するでしょう。「俺は苦労して社長になったんだ!」「私は売れっ子スターなんだ!」というように、満たした条件に胡坐をかいてはいけないのです。そうなってしまうと、ジェサベルのママのような厄介なクリーチャーができあがってしまう。ホラーとしては最高のママなんですけれどね。

あー、ひどい。いい映画でした。日本語が壊れた感じでジェサベルレポートを終わります。