蜘蛛は黒猫や蝙蝠たちと共に、闇の存在として受け止められることもあります。キリスト教では、善良なミツバチと対極をなす邪悪な蜘蛛とされているようです。一方、知恵や言葉・文章を司る神であり、神話によっては、人類の誕生に関わる大いなる存在になっていることもあります。実際に蜘蛛は、ハリウッド映画の中で演技をするくらいに賢いとどこかの記事で読んだことがありましたし、タランチュラをペットにしている飼い主さんは、蜘蛛は飼い主が誰かを理解しているし、人になつくし、賢くて可愛いとおっしゃっていました。

 中国の伝説「七夕」の織姫の別称の1つに、「蜘蛛姫(ささがにひめ)」があります。「ささがに」は、蜘蛛を意味する古語です。ギリシャ神話の中にも、はた織り娘アラクネと、はた織りの腕を誇る女神アテナの腕比べのエピソードがあります。アラクネは、神と人間の恋愛模様を織り、神々の怒りを買って蜘蛛の姿に変えられてしまいました。夫である牽牛に恋い焦がれ、はた織りの仕事をおろそかにした織姫と、神と人間の恋を織ったアラクネは、それぞれ罰を受けましたが、罰せられたあともはた織りを続け、蜘蛛が蜘蛛の巣をつくるように、美しい織物を生み出しています。

<西洋占星術をわかる方への余談>
私の出生図では、8ハウス魚座で金星と小惑星アラクネが合になっています。オカルトと蜘蛛に惹かれるのも当然ですね。

 ネイティブアメリカンに伝わるホピ族の神話では、「蜘蛛の祖母(スパイダーグランドマザー)」という神の使いが、地下に誕生した虫を導いて人間を生み出しました。創造主の力によって誕生した生命体をより高い次元へと導く役割を担った蜘蛛の祖母は、土器の焼き方や布の織り方を人々に教え、最後に言葉を与えたと言われています。まさに知恵の神様ですね。
 ラヴクラフトの小説「クトゥルフ神話」では、アトラク=ナクアという蜘蛛の神が登場します。人間と同じくらいの大きさの蜘蛛の姿で、昆虫器官を多数持ち、深淵の谷間で巣を張り続けているのですが、何のために生まれ、何のために巣を張るのかは謎です。巣が完成した時に世界が滅びるという不吉な一説も・・・。

 芥川龍之介の小説「蜘蛛の糸」では、お釈迦様のお遣いとして蜘蛛が登場していますね。ほかにも、アルプス地方の鬼蜘蛛(オニグモ)は、背中に十字架の模様があることから神の祝福を受けた生き物とされています。古代インドの教典「ウパニシャド」では、糸を伝って上昇する蜘蛛が自由の象徴になっているなど、吉凶合わせて多くの意味を与えられ、世界中から注目されている蜘蛛なのです。