『原点』安彦良和 | 原型師は燃えているか?

原型師は燃えているか?

見せてもらおうか そのオヤジの奮戦とやらを

フェイスブックで本を紹介する企画があり、そこで書いた記事を転載します(若干増補改訂あり)。

 

発売直後に買って何度も何度も読み直しているので表紙が汚い。この本は「アニメの本」ではない。正確に書けばアニメ業界に就職する部分「も」書かれている本だ。共著者の斉藤さんは青森市にある新聞社東奥日報の元記者さん。同紙に連載されていた50~60年代米軍三沢基地F-105ワイルドウィーズル部隊(核装備)のルポは地方紙と思えない出来の良さで母に言って貯めてもらい、帰省する度まとめて読んでいた。あ!あの記事を書いた記者さんなのか!!と買ってから気づく。迂闊!

 


安彦さんが弘前大学を学生運動で中退したのは知っていたが、その詳細がご本人と「記者の第三者視点」の両方で描かれている。何故学生運動が必要だったのか、その心情も記述されていて「70年安保」の大学生はこういうメンタリティだったんだろうなと伺えた点が良かった。しかし逮捕されて退学処分だったとは全く知らなかった・・「仲間」には連合赤軍事件に名を連ねる人物も居て、それついても包み隠さず記述されており相当興味深い。地方大学(それも青森)の学生運動について書かれた本という意味でも貴重ではないかと思う。


実は個人的に安彦さんの奥様と繋がりがあり、私が青森出身ということもあってお話させていただいたこともある。学生結婚ということで本には奥様も登場していて少し身近に感じられたが、他にも高校漫研の後輩でアニメーション研究家の五十嵐浩司氏も談話を寄せていて、何とも縁が深く感じられる本となった。随分前だが(20年くらい前?)青森県立美術館の学芸員氏と地元で飲む機会があり、安彦さんの作品も収蔵すべきだ!と強く主張したのが思い出される。後に県立美術館で安彦さんは講演している。聞き手は前出の五十嵐氏だったことをこの本で知った。正直に書けば嫉妬した(笑)。
この本を更に理解するにはユリイカの安彦良和特集号と角川の『アニメ・マンガ・戦争』、『「彼女たち」の連合赤軍』が参考になった。近著の『革命とサブカル』は未読。
学生運動の話だけ触れたが、本の内容はそれだけではなく生い立ちからアニメ業界で仕事を見つけ、「足を洗って」漫画家になるまでが書かれている。