喜びから絶望 | 原型師は燃えているか?

原型師は燃えているか?

見せてもらおうか そのオヤジの奮戦とやらを

頭を洗ってもらってサッパリしたが、尿道カテーテルが抜けたらシャワーも浴びれるようになった。

首から管がぶら下がっているので、水がかからないように首から下だけを洗って下さいと注意された。

首を切開して静脈に直接管が刺さっているので感染症の危険がある為だ。

今までは看護師さんに週一で消毒、清拭してもらうだけだったので、これも随分気持ちが晴れた。

最初に入ったシャワー室は個人用のかなり小さいものだったが、二回目からは浴室もある広いシャワー室に通された。

こちらは浴槽もあって随分広いんですねと看護師さんに聞いたら、昔は患者同士で連れ立ってまるで銭湯にでも行くように病院の風呂に入る事もあったという。

そんな病院文化もあったのかと少し驚く。

腎臓病の事も含め、知らない事が世の中には多すぎる。

 

回診に来た先生に、そろそろ首のカテーテルが抜けるかなと言われた。

左手の手術跡に聴診器を当てて増設したシャントと血管の血流を確認されるのだが、経過は相当良く血流量も多いという。

手術直後に「これを繰り返し握る運動をするとシャントが育ちますからやって下さい」と、細かい粒々が中に入った印楼の縫いぐるみみたいな形状の訓練機具を渡されていた。

運動としては昔テニスをやっていた頃に握っていたパワーグリップと同じ感じだ。

毎日ヒマな時に手が疲れる程度に握って手首を鍛えていたが、その効果があったのか。

手首に耳を触れずに近づけただけで、ドードーと血液が流れる音と鼓動が聞こえる。

聴診器を使ったら相当激しい音が聞こえるのだろう。

透析針を刺しやすいように血流を増やす手術をやったのだから当然とは言え、外に音が聞こえるくらい激しく流れるようになったとは・・・

約2週間で手術したシャントが使えるようになると説明を受けていたので、予想していたより早く10日程度で血管が成長したようだった。

 

そして首のカテーテルが抜かれる日は突然やってきた。

医師が病室に来て、今からカテーテルを抜きますと言った。

首を固定されるように貼られていたテープが全て剥がされ、ブラブラしていた三本の管があっさりと抜かれた。

これで私の体に入っていた異物(笑)は全て抜けた。

頭も体も綺麗になり異物も抜けて気分爽快!・・となるはずだった。

 

透析室。

今までは首の管に機械を直接接続して透析をしていたので痛みは全くなかったのだが、今度からは左手の育ったシャントを使うと言われた。

ベテラン看護師さんがゴム管の駆血帯で二の腕の血流を止めて静脈を探る。

これは静脈注射の予備行動。

見たくなかったので目を背けていたが針が刺された。

うっ、痛ぇぇ!!

「もう一本刺します」

マジか、二本も刺すのか?

二本目はもっと痛ぇぇぇ!!!

思わず右手を固く握り締めた。

透析は結構太くて長い樹脂製の針を二本、割に深くにありそうな血管に刺すのだと初めて知った。

体から抜いた血液を機械で濾過しそれを体に戻すので、抜きと戻しで二本の針を別の血管に刺し血液を循環させるのだった。

「これを一日置きに毎回やるのかよ・・それも一生・・・・・」

少し絶望した。