前回まで。
遥か未来。人類は意志を持つ人間型ロボット=アンドロイドと共存生活をしていた。
第一次アンドロイド革命は、「アンドロイドは人間の命令に対して、主人や人間社会に著しく迷惑をかけることが容易に推測出来る命令には『ノー』と言ってもよい。また判断材料が乏しい時には『解りません』と答えてもよい。」
ということが認められた。これによりアンドロイドにも一個人の人格権が認められた。
これが認められるまでの働きかけが「SAY No(いいえといいましょう)運動」と呼ばれている。
第二次アンドロイド革命は技術的な進歩だった。
『自動アップデート機能』という画期的なプログラムが開発され、それを備えたアンドロイドは「新型」、備わっていないアンドロイドは「旧型」と呼ばれるようになる。
自動アップデート機能は、アンドロイド自身が「現在の自分に何が必要か?」「どのように自らを改良するか?」を考え、主人の指示がなくとも最新の形に更新し続ける機能である。しかし、それも結局はプログラムの延長に過ぎない。
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ブリジット…在原家の執事であり、主である長秋の勤務する病院では秘書として働く。
旧型アンドロイドであることを悩み、長秋に貢献出来ていないことを悔しがる。長秋の友人であり、長秋の父の元助手であった柿本直哉の改造手術により「世界で唯一、自らの感情の高まりによって涙を流すアンドロイド」となる。これにより涙の意味と価値を考えるようになり、自己の客観性、即ち「もう一人の自分」の認識に優れた、より人間に近いアンドロイドへ進化する道を進む。
在原長秋(ありはら ながあき)…職業は医師。屋敷では四体のアンドロイドと生活する。自動運転が当たり前の時代にポルシェのハンドルを握ったり、健康指向が頂点の時代にハンバーガーを好む。父は既に他界。
人と人の触れ合いを重視した医療現場を望むが職場では孤立している。
柿本直哉(かきもとなおや)…長秋の親友のウラの改造屋。ブリジットに涙を流す機能を付けた。妹を思い、まっとうな科学者に戻りたい思いが僅かにある。
柿本樹乃(かきもと きの)…直哉の妹で長秋をあっきーと呼ぶほどの古い仲。直哉から独身を心配される。
キャサリン…新型の調理アンドロイド…ブリジットを虐める。
グレース…新型庭師アンドロイド。屋敷の警備のみから自らの意思でガーデニングを習得。
マーガレット…新型メイドのアンドロイド。お掃除好き。