ブルーキャット 第五話 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「お待ちしておりました、社長。」

都心から車を走らせ、辿り着いた農家で待ち受けていた秘書の様な女性。
会社の施設であることをカモフラージュする為かと思ったら、本当に彼女の実家だそうだ。

「僕は家族ぐるみで会社に貢献する者を優遇する節があるからね。
役員連中からは苦言を受けるけど、氏素性の知れない者はやはり重要なミッションに採用出来ないよね。」

「社長の社員を思う深いお志が理解されないのは残念ですが、忠誠心がふるいにかけられて私は満足ですわ。」

笑顔で農家の奥に案内する秘書の女性。
彼女の両親達と思われる年配の男女がお辞儀すると、床にある大きな扉を二人がかりで開きはじめた。

「地下室?」

「ええ、社長が我が家を選んでくださって大変光栄でございます。
世界有数のシェルター機能を備えた秘密会議室でございます。」

おそらくは茨城県辺りにある農家然とした家屋の地下が、天下の骨川コンツェルンの秘密会議室になっていたのは驚きだ。しかも秘書の女性の実家で彼女達は平事も有事もここで暮らし続けているのだ。
骨川さんは怖がりな部類の男性で、それは「彼」と似ている部分でもあったが、骨川さんは「警戒心」というか「安全管理」「リスク軽減」という方面に上手くそれを昇華していると私は感じた。
それに比べて未だに行方不明な「彼」は恐怖そのものに押し潰されたままなのだろうか?「ブルーキャット」を私達四人で封印せざるを得ない道を選んだ私達の中で、一緒に生活していた彼が最もダメージが大きかったのは十分に理解出来るが…。

「クリスティーネ剛田さんがお待ちです。」

地下室の階段を降りて扉を開くと、深紅のベレー帽を被った女性が待っていた。

「お久しぶり!会いたかったわ源さん。
流石は骨川さんね。
本当に源さんを連れて来てくれるなんて。」

「あの…クリスティーネさん。申し訳ないけど私、は未だに『彼』の情報は何も…。」

「そんなのアテにしてないわよ!私が期待してるのは数学者としての貴女よ。
この写真を見てよ。」

見せられたのは、銃弾に倒れた兵士や政治家の目を覆いたくなるような写真だった。

「これが何?」

「世界中に居る私の絵師仲間で今、話題になってる狙撃手の仕業よ。
狙われた人物や、狙撃のクセを源さんに調べてほしいの。」

「どうして私が?」

「この狙撃手の通り名は『glass runner 』(ガラスの走者)って言うの」

続く