十字軍の遠征は騎士と教皇の権威を失墜させました。
更に騎士は時代の変化に伴う追い討ちがありました。
一つは大航海時代による商人の台頭です。
「英国紳士」なんていう言葉は漫画や小説に当たり前の様に出てきますが、「紳士」と「貴族」の違いは?
「紳士」は「騎士」ではないのか?
紳士とは農業の精算技術が向上し、貨幣経済が浸透してきた比較的安定した世の中に生まれた
「中産階級」の者に該当します。
騎士とは「武功」「王宮での訓練」が必須であり
貴族は「王族との血縁」「世襲を認められた家柄」
となります。
「紳士」は世襲制でなく、王国から領地を賜ったわけでもなく、従軍の義務もない。
そして、紳士教育を受け、社交界の出入りを認められ、生活に困ってない者ってなります。
つまりは…
「商売で成功した者」
になります。
輝かしい戦績で王様から領地を頂くより、船乗りに「先行投資」する方が莫大な富を築けるようになったんですよね~。
更には「銃火器の発達」も騎士には追い討ちとなります。
王宮での調練という必須カリキュラムも、大砲の前にはかなわない時代が来てしまうのです。
「騎士道精神」は教室の中の退屈な授業となってしまうのです。
はい、ここまで連載して書いてきましたが、騎士が土地由来で、紳士が貨幣経済及び海運商由来と考えれば、その隆盛と斜陽が伝わりやすいかと思います。
しかし、大切なのは「先行投資」です。
騎士の従軍も、船乗りに仕事を頼むのも「前払い」なのです。
この辺りが、リスクを避けたがる日本人には理解し難い、本当の意味での「ギャンブル気質」なんですよね。
船乗り達は投資先を募る為に、如何に自分達の船が安全か、如何に自分達が数々の苦難を乗り越えてきた冒険家であるかということを、自分達の「船の模型」を用いて説明したのです。
これがプレゼンの基礎とも言われています。
波の穏やかな地中海はイタリア(ベネチア)商人に牛耳られていました。
だからまだ、弱小国だったポルトガルは危険な外洋に出るしかありませんでした。
ポルトガルはインド航路から胡椒で大儲けしますが、スペインの無敵艦隊に敗れます。
そのスペインも、当時後進国のイギリスに敗れます。
スペインの敗北以降、奴隷貿易廃止や憲法の制定や三権分立やらはイギリスが先行しますが、決して「紳士的だったから人権に配慮した」ではありません。不必要で非効率だから削ったのです。