春日狂想~中原中也の詩が与えてくれたもの | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

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このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

 1

愛するものが死んだ時には、
自殺しなけあなりません。

愛するものが死んだ時には、
それより他に、方法がない。

けれどもそれでも、業(ごふ?)が深くて、
なほもながらふことともなつたら、

奉仕の気持に、なることなんです。
奉仕の気持に、なることなんです。


愛するものは、死んだのですから、
たしかにそれは、死んだのですから、

もはやどうにも、ならぬのですから、
そのもののために、そのもののために、

奉仕の気持に、ならなけあならない。
奉仕の気持に、ならなけあならない。

2

奉仕の気持になりはなつたが、
さて格別の、ことも出来ない。

そこで以前(せん)より、本なら熟読。
そこで以前(せん)より、人には丁寧。

テンポ正しき散歩をなして
麦稈真田(ばくかんさなだ)を敬虔に編み-

まるでこれでは玩具の兵隊、
まるでこれでは、毎日、日曜。

飴売爺々(あめうりぢぢい)と、仲良しになり、
鳩に豆なぞ、パラパラ撒いて、

まぶしくなつたら、日蔭に這入り、
そこで地面や草木を見直す。

苔はまことに、ひんやりいたし、
いはうやうなき、今日の麗日。

参詣人等もぞろぞろ歩き、
わたしはなんにも腹が立たない。

((まことに人生、一瞬の夢
ゴム風船の、美しさかな。))

空に昇つて、光つて、消えて-
やあ、今日は、御機嫌いかが。

久しぶりだね、その後どうです。
そこらの何処かで、お茶ども飲みましよ。

勇んで茶店に這入りはすれど、

ところで話は、とかくないもの。

煙草なんぞを、くさくさ吹かし、名状しがたい覚悟なして、-
戸外(そと)はまことに賑やかなこと!
-ではまたそのうち、奥さんによろしく、

外国に行つたら、たよりを下さい。
あんまりお酒は、飲まんがいいよ。

馬車も通れば、電車も通る。
まことに人生、花嫁御寮。

まぶしく、美(は)しく、はた俯(うつむ)いて、
話をさせたら、でもうんざりか?

それでも心をポーツとさせる、
まことに、人生、花嫁御寮。

3

では、みなさん、
喜び過ぎず悲しみ過ぎず、
テムポ正しく、握手をしませう。

つまり、我等に欠けてるものは、
実直なんぞと、心得まして。

ハイ、ではみなさん、ハイ、御一緒に-
テムポ正しく、握手をしませう。
****
実生活での親しき戦友(なかま)達の間に授かった新たな命に対して、私からこの詩を贈ることを祝福と致します。了