試合後、自陣に引き分けの報告を簡単に済ませた後、急ぎ足で摩亜耶さんはその場を離れた。
解っている。
山田さんと待ち合わせしているのだろう。
解っている。
次、また会える日まで、残された時間を二人きりで過ごしたいのだろう。
残り二道を見守るのに、どちらの塾生かどうかは関係ない。
二人は将来を誓った婚約者なのですから。
私の初恋は山田さんが点てたお茶の様にほろ苦い結果となったようです。
次に貴方に会えるのは、卒業式でしょうか?勿論、貴方は摩亜耶さんを見送りに来られるだけでしょうが。
その時には静かな水面の様な気持ちで受け入れられる為に…私は今日のお茶の味を一生忘れません…。
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第三道の抽選が行われるまでにまだ時間がある。
保健室で寝てるミラの様子を見に行こう思ったが…。
羅漢塾サイドを見ると、荷物を背負った男性が校門の方に向かって…?
「…最終道まで見ていかれないのですか、狼男のヨシノブさん?」
「…かごめちゃんだったかな?
あぁ、それがしの義理は果たした。
もうここに居る理由もあるまい。」
「どちらへ?」
「一匹狼は流れるのみ。
足の向くまま、気の向くまま。
明日には魔界に居るや、人間界に居るやも知れぬ。」
「そんな!それではヨシノブさんは八連制覇の為だけに羅漢塾へ?」
「それがしは信ずる物の為に戦っただけのこと。」
「…あの…こんな事を尋ねるべきでは無いかも知れませんが、バハムート塾長とは…?
ヨシノブさんほどの人が手を貸すに値するお人なのですか?
真理亜塾長はバハムート塾長の為に信じられない負担を…!」
「それがしの視点で言えば、バハムート殿の目的は理解出来ても、手段は賞賛出来ぬと言うことだ。
それがしが羅漢塾という学舎を離れる理由でもある。
だが、安心なされい。『来るべき時』にはそれがしが信ずる者を助け、守りたい者を守る!
バハムート殿が災いの業火で全てを焼き尽くそうとしても…。」
「…と、しても?」
「かごめ殿は必ずお守りする!」
「え…?
どういうことですか…!?
そんな!私の返事も待たずに立ち去るなんて!」
…居ない…。。
スピードの大妖と言われる狼男に、ガーゴイル如き私が追い付けるわけがない。
…必ず…私がピンチの時には助けに来てくださいよ…。
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「第三道は『舞道』です!」
…はい、『武道』違いですね…。
舞いの勝負と聞いて喜んでるのは雨野うず女さんだ