白いマット。
三本ロープ。
赤コーナーと青コーナー。
…まさか人間界とおサラバした私が、妖精界にまで来て、人間を真似たプロレスのリングに立つことになるとはな…。
「では、公平を期す為に、四選六道の抽選は私、マイク赤羽が引かせて頂きます。」
人間の姿をした大天使ミカエルはマイク赤羽と名乗った。
真理亜塾長といい、どうやら天国というのは、私が見てきた政治家や官僚の世界と似たようなシガラミだらけなのだろうか?
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「柔道、剣道、合気道。何がこようとも婦女子達に遅れは取らぬ。」
「では、第一道は…。」
「……。」
「華道です。」
「……。」
立会人の赤羽氏から発せられた声に場内が静まる。
してやったり!の笑みを浮かべたのは真理亜塾長だ。
「どういうだ!?伝統ある八連制覇に華道だと?
戯れ言はよせ!
誉れ高きR-4にそのような…。」
「文句はバハムート塾長に言ってもらいましょうか?
貴方達が提案した八連制覇を受け、雨野うず女さんを参加させる条件の代わりに、『六道』つまり、何の『道』で勝負するかはこっちで決めていい条件ですが?」
屈強な男子塾生達を前にしても一歩も引かないのは元弁護士の倫恵教官だった。
「…これは一本取られましたね。
華道も確かに『道』だ…。
構いません、その条件で勝てば良いのです。」
「バハムート塾長!ここは塾生代表の私達が!」
「因幡アル君。華道での闘いに勝算は?」
「アルミラージは一角ウサギの妖怪。
植物の扱いは慣れてます。」
「解りました。では、君のパートナーは…一反もめんのコトー。
君だ。」
「かしこまったばい。」
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「やだ、アルだわ!
塾長、私が行きます!
弟と決着を付けます。」
「落ち着いてね、ミラさん。」
「もう一人は私が行きます。
マンドレイクの万谷湖々。
植物の妖怪の私は、華道が一番本領発揮出来ると思います。」
「ミラさんの手綱は任せたわ。」
「はい!」
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「……。」
「どうした?」
「R-4は天立、地立から塾長直々に集められたエリート集団ばい。
お前の指図は受けんばい。」
「…それでも構わぬ。姉さんを手に入れる為なら…。」
「ルールは簡単。15分間で美しい作品を作るか、人間の姿で相手二人をKOするかだ。」
華道でKOて…。
人間の文化を誤解しまくってる…。
いや、剣道や柔道でも、リングとタッグ関係ないし…。