舞台上の二人は至極当然の様に乱入した雨野うず女の踊りを受け入れた。
テンポの早い曲ではテクニックが要求されるが、スローバラードでのダンスは表現力が要求される。
それはトリプルアクセルで観衆を熱狂させた浅田真央というより、イナバウアーで人々の心の時間を止めた荒川静香のようだった。
青春という若くて儚い時の残酷さを描写する雨野うず女。
指先、視線、口唇の僅かな動きだけで楽曲のテーマに添った初恋は表現されていた。
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「…むぅ…。あの女人が間違いなくアメノウズメであろう…。」
「うむ、正に舞い降りた天女の如く…。」
「我が塾長がご執心なのも納得ばい。」
「……。」
「うむ、ダグラスの申す通り、ご執心なのはゆかり教官かもしれぬが…。」
「それがし達R-4をお呼びになられたのは必勝を願われてのこと。」
「女人相手でも手加減せんばい。
四選六道八連制覇は少しの油断が命取りばい。」
「……。」
「油断しないように注意するのは私達以外だって?
そうだな…。我が塾生代表殿はまだしも…。『あいつ』には言って聞かせないとな…。バハムート塾長もとんだ『ハンデ』を与えてくれたものだ…。」
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UN★でっどの曲が終わり、何事もなかったかの様に一緒に手を振り頭を下げるうず女。
その様子に漸く我に返った目暮樹里亜が…。
「ちょっと、うず女先輩!いくら綺麗な踊りを披露しても、飛び入りはステージの二人に失礼ですよ!
ちゃんと謝らないと…。」
二人に取っては実質これが初の会話だった。
筆頭同士として、八連制覇のメンバー同士として顔を憶えた程度だったが…。
「由里亜ちゃん!?
由里亜ちゃんだー!
嘘~久しぶり~!ずっと会いたかったんだよ~」
ステージから退場を促す為に舞台に上がった樹里亜だったが、満面の笑みで抱擁してくるうず女に面食らったようだった。
「え?え?何!?どういう事ですか?」
「フフッ、生真面目で男っぽい態度変わらないね、由里亜ちゃん。あっ、でもショートヘアにしたんだ?
似合ってるね♪」
「いえ、私は子供の頃からショートですけどって…まさか、私とお祖母様の若い時を間違えて!?」
「……。
そっかぁ…。77年も私は隔離棟に居たもんね…。神族や悪魔族は妖怪とは寿命が違うもんね…。
でも生き写しとはこのことね…。」
「私、そんなにお祖母様に似てますか?」
「ロングヘアに王冠を着けたらそっくりよ」続