「倫恵さん!
いつこちらへ!?」
「今来たばっかりよ。
大丈夫、私は弁護士!
不利な状況を好転させる責務、『死中に活路』を見いだせなくてクライアントを守れるわけないでしょ!」
「つ、つまり八連制覇は受け入れるが、本来は6つの内の4つがランダムに選ばれる『六道』については、内容をこっちで決めるということか?」
「そうよ!
剣道や柔道はまだしも、相撲や弓道なんて、相手だけに有利な条件を飲む必要なんてないのよ!」
「しかし、倫恵教官…。
それでは私達に有利な『六道』とは…?」
「それを今から話し合うのよ。
でも、これには八人のメンバー全員の合意が必要よ。
と、なると…真理亜塾長、本当にいいのかしら?
塾長自らが守り続けてきた77年を、塾長の手で壊してしまうのよ?」
「ええ…。
決断しなければいけない日が来るのはわかっていたわ…。
いつまでも先伸ばしに出来ないことも…。
バハムートの条件が『雨野うず女』なら、彼女を幽閉先から解放して選抜メンバーに加えないとね。
たとえ彼女が嫌がったとしても…。」
「真理亜塾長は普段は沈着冷静で懐深い愛情を私達や塾生に示してくれるのに、何故、雨野うず女さんの話になると感情的になるんだ?」
「流石は元政治家のマツリ教官ね。
私の正体が慈愛に満ちた大天使ガブリエルでも、私怨を棄てきれないのよ…。
万能の神様じゃないからね…。」
「フッ、その辺りは少しずつ聞き出しておくか。
どうせ私達の知らない『密命』がまだあるんだろう?」
「さぁ、そこは守秘義務ですから。
とにかく、文化祭は八連制覇だけじゃないわ。『軍資金稼ぎ』もしないとね♪
そのための助っ人も用意しといたわ。」
「ありがとう、倫恵さん。
私が直接人間界に行くわけにいかないから、代役に感謝してるわ…。
さて、それじゃあ鳥羽かごめさんと万谷湖々さん、貴女達二人には雨野うず女をここに連れて来て任務を与えるわ!
大丈夫、隔離棟にはすへ子教頭の部下が居るから、この鍵を見せれば安心して。」
「かしこまりました。
一号生筆頭代理鳥羽かごめ。必ず雨野うず女さんを連れて参ります!」
「二号生筆頭代理万谷湖々。
77年間も二号生筆頭が空籍だったのは、この日の為だったんですね。
聞いた話しか知りませんが…うず女さんは今でも二号生筆頭に相応しいと思ってます。」
***
「さて、あとは塾長として個別に『話しにくいこと』の相談に乗るわ」続