「で、あるからして人間社会の象徴である『民主主義』の根幹は『法』と『選挙』であり…。」
ゆかり教官と倫理教官が萌慎艶戯塾を去ってから一週間…。
何事もなかったかの様に授業は続いている。
カリキュラムは簡単に書き換えられ、私達が毎日、テストや宿題に追われることは変わりなかった。
でも私にはそれこそが残ったマツリ教官達の配慮にも思えた。『教える側の都合で塾生に動揺を与えてはいけないみたいな…。』
でも、私達はそれ以上にもどかしさを抱えていた。
せっかくおクネ寮長からマル秘情報を聞き出してもどうすることも出来なかった。
我がスライム王家に代々伝わる『八識の冠』。
それを私の祖母が手放してでも塾長と塾生を守った…。
それが解ったからと言って私に何が出来る?
萌慎艶戯塾が抱える負債を私なんかが肩代わり出来るのか?
『原因は貴方だから』と言って壁向こうの黄昏羅漢塾に請求出来るのか?
『取りあえず我が王家の宝は返してください、塾長はそれから自分で借金を返してくださいね!』
なんて…
「言えるわけないじゃない!!」
「……。」
「……。」
「どうした、目暮さん?
発言は挙手してからだぞ!」
「キャハハ~!」
「樹里亜ちゃん夢の世界に行ってたのかな~?」
「流石!一号生筆頭は私達のお手本ね!」
授業中に思わず声に出しちゃったら散々笑われちゃった…。恥ずかしいなぁ…。
「あ、あの冴木教官!
放課後相談したいことが…。」
「何だ?辞退の相談はまだ早いぞ?」
「辞退?いえ、あの…。」
「話を聞いてなかったようだな。
塾生に『選挙』を体験してもらう為に、この教室で一号生筆頭を自分達で選んでみる『模擬選挙』をやってみないか?と話してだが…私も現筆頭の君の意見を聞きたい。
わかった。では放課後、社会科準備室でな。」
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「一号生筆頭・目暮樹里亜入ります!」
負債か…。なるほど、ならば全て納得だ。
人間界から来た私は、この塾内で使用される電気やガスや水道はどうなってるんだろう?と思ってたが…三好真理亜塾長自身『気』を地・水・火・風の妖精に捧げることでエネルギーに変換してたんだ…。
真理亜塾長が自分で教壇に立たないのは、萌慎艶戯塾のエネルギーを生産し続けてたからか…。
個人vs個人ではなく、塾と塾生を守りながらバハムートと戦った結果が高額な負債とは…大天使ガブリエルの『慈愛』の結果がこれか…皮肉だな
続