言わなきゃ…。
ここで私の本当の気持ちを伝えないことは皆への裏切りだわ…。
私の気持ちは固まった。
竜王と雨野うず女ちゃんが相思相愛の固い絆で結ばれていないなら、私にも付け入る隙があると。
私達五人はそれぞれの調査対象を受けもっていた。
マツリちゃんは竜王バハムートの封印を手助けしたという当時の一号生筆頭と彼女が使用したという「秘宝」について。
教子先生は一般塾生の羅漢塾と竜王についての認識レベルを。
治美先生は隔離されてると言われた雨野うず女ちゃんのこと。
倫恵先生は真理亜塾長の行動の真意と塾外の妖精界と人間界についての調査。
そして私、古瀧ゆかりが任されたのは…竜王バハムートの調査…。
「彼」を調べる為に真理亜塾長から例のDVDを借りて視聴覚室で直接コンタクトを取った。
DVDはいわば彼の「分霊」。
封印された彼から生まれた精一杯の彼自身だった。
調査するつもりが調査されたのは私。
モニター越しの会話はス○イプを使用したデートよろしく、会話を重ねる内に私は文字どおり「虜」になった。
思えば私はずっとこうなりたかったのかもしれない。
考古学研究員として恐竜を発掘調査してたのも、マツリちゃんのお父様にお世話になることを選んだり、真理亜塾長の元に一度は籍を置くことを決めたのも。
私は「絶対悪」を求めていたのだ。
私を捨てた両親と眼鏡ブスな私を苛めた男子に裁きの鉄槌を降してくれる「覇王」を。
それはマツリちゃんのお父様でもマツリちゃんでも、真理亜塾長でも、恐竜の化石でもなかった。
「竜王バハムート」
目的の為なら手段を選ばない非道ぶりに私は惹かれた。
そして視聴覚室で女の子の全てを初めてさらけ出した私を
「可愛い」と言ってくれた…。
私は今日、萌慎艶戯塾を去り、黄昏羅漢塾の一員となる。
黙って去ることは出来ない…。
言わなきゃ…と、その時…。
「ねぇ、聞いて!
随分考えたんだけど…。」
「どうしたの倫恵ちゃん?」
「突然申し訳ないけど、私、やっぱり人間界に戻るわ!」
「ええ~?
急にどうしたのよ~?」
「やはり妖怪と暮らしたり、バハムートの危険が迫ってたり、生半可な覚悟じゃ無理だな…。
人間界で弁護士で復帰するのか?」
「違うわよ!
私はここの塾生も大好きだし、真理亜塾長も尊敬してるわ…。
でも…問題は塾外にもあるの。
私は人間界で苦労する卒業生をサポートしたいの」
続