**それから更に一週間後**
(教子)「じゃあ、ここまでのみんなの経過報告を聞きましょうか?
まずはあたしからね。
可能な限り多くの塾生から聞き取り調査したけど、因幡ミラさんみたいに兄弟親戚が黄昏羅漢塾に通ってる家庭は珍しくないわ。
単純に男子校、女子校って感覚ね。
ただ、私達の萌慎艶戯塾が『人間界への適合』を大前提にしてるのに対して、黄昏羅漢塾はあくまで『漢を磨く場所』って感じらしいわね。」
(治美)「うわぁ、体育会系っていうより軍隊式…?」
(教子)「塾生もバハムートや羅漢塾云々で怖がってるんじゃなく、単純に『男の子』として怖がってるだけね。
人間界でも女子校や女子寮の敷地に侵入者が来たらパニックになるのと同じよ。」
(マツリ)「なのにあの三人娘は自分達から壁を越えて『男子の花園』に侵入しようとしたのか…。
やれやれ、勇気というより無茶と無鉄砲だ。
壁=バハムートだと言うのに…。
次は私だ。
私は一号生筆頭の目暮樹里亜さんから詳しく話を聞くことに絞った。
樹里亜さんの祖母が77年前に捧げた秘宝とやらは何も封印の道具じゃない。
その名を『八識の冠』。
スライム族の王冠であり、一族の団結と知恵の象徴らしい。」
(教子)「そっかぁ、その王冠が壁向こうの羅漢塾にあると思ったから、樹里亜ちゃんはかごめちゃんとミラちゃんと、たった三人で羅漢塾に乗り込んで奪還しようとしたのね…。」
(マツリ)「まだ『八識の冠』の詳細についてはわかっていない…。
ただ相当な高価なものであることは違いない。」
(治美)「次は私ね。医者として雨野うず女ちゃんに会ってきたわ!」
(ゆかり)「…どんな方でした…?
竜王の心を惑わせるくらいの女の子って…?」
(治美)「監禁だ、拘束だなんてとんでもない!
塾内のはずれに固い岩場で守られた個室でけっこう快適に暮らしてわよ!」
(マツリ)「ふっ、アメノウズメの方が天の岩戸に隠れるとは皮肉だな…。」
(治美)「お世話係にはフルカスこと古川すへ子教頭の部下20人がローテーションで付いてるし、彼女も真理亜塾長に護衛してもらって安心してたわ。」
(ゆかり)「じゃ、じゃあ、うず女さん的には竜王のことは…。」
(治美)「そりゃ、一晩寝たことある仲なんだからまんざらでもないでしょ?ただうず女ちゃんは、バハムートの嫁になることと、バハムートの子供を産むことは絶対に嫌って怖がってたわ」
続