「バハムート」その名を聞いただけで納得してしまった五人の人間女性。
女子妖怪の為の私塾が大天使ガブリエルによって創設されたのなら、それを模して造られた男子塾がバハムートによって造られことをすんなり受け入れてしまった。
しかし、モニターに映る人間化した彼は、マツリ達日本人女性がテンプレートに思い描くバハムートとはかけ離れていた。
(教子)「この画像の男性があの『竜王』バハムート…?なんかイメージが…」
(治美)「もっと逞しい男性かと…」
(ゆかり)「確かに屈強なイメージはあっても、粗野で粗暴な感じじゃないと思うから、理知的で落ち着いた雰囲気は納得かなぁ…?」
(マツリ)「しかし、これでは博士か昭和の文豪…というか大正ロマンの書生だな…とても黙示録戦争の起因となる化物には見えぬ…いや、そのかけ離れたイメージを実現出来るだけ魔力が強大ということか…?」
(倫恵)「これじゃあ、悪魔王サタンを守護する騎士というより棋士ね。扇子が似合いそうで…。」
(真理亜塾長)「棋士だけに『竜王違い』ね♪」
(全員で)『上手いこと言わないで!!」
(真理亜塾長)「冗談はそれくらいにして、マツリさんの言う通り、見てくれくらい彼はいくらでも変えられるわ。
イスラム圏に伝わるバハムートは本来は大きな魚だし、キリスト教圏に伝わる『ベヒーモス』は巨大な陸上草食動物…恐らくはカバか象をイメージして伝承されてるわ。」
(ゆかり)「え?ドラゴン達の頂点に君臨する『知恵ある最期の竜王』がバハムートじゃないんですか?」
(真理亜塾長)「それは現代のファンタジー小説やゲームの中でのみ広がった文化よ。
77年前に私と戦った時も基本的に今、このDVDに写ってる姿で私に致命傷を負わせてきたわ…。」
バハムートのルックスだけで話が弾む中、話を軌道修正したのは、モニターから聞こえる当人の声だった。
「美しいお嬢様…。
お望みとあらば貴女好みのドラゴンにも変化してあげますよ…。」
(ゆかり)「ウソ?DVDなのに私と会話してるー!?」
(バハムート)「貴女がこのタイミングでこう言うと思ったのですよ。」
(ゆかり)「本当に?」
バハムート「はい!」
「……。」
「……。」
(ゆかり)「…じゅげむじゅげむ…。」
(バハムート)「ごこうのすりきれ…。」
(真理亜塾長)「彼にとってDVDが記録媒体か通信媒体かなんて小さなことなのよ」
続