「みんなただいま~♪」
「あっ、お帰りなさい倫恵さん。」
「ふ~、塾長特命の出張という名の人間界…。久しぶりに楽しかったわ。
マツリちゃんもゆかりちゃんにもお土産買ってきたからね~」
「あ、ありがとうございます。
ゆかりはともかく、公人の私が今さら人間界を出歩くわけにもいかず、弁護士の倫恵さんにばかり人間界との取り次ぎを任せてしまい…。」
「いいのよ…どうせ仮面夫婦同然だった私が人間にも妖怪にも必要とされるには幸せなことよ。ほら、それよりこれ見て!
次の特別授業で使えそうなDVD買ってきたの♪
上映会しましょうよ!」
「あ~、『平成たぬき合戦ぽんぽこ』可愛い~」
「懐かしいな、ゆかりと一緒に観た時を思い出す。
確かにこの映画には社会と政治の縮図。
それに人間界に溶け込もうとする狸の努力。
確かに我が萌慎艶戯塾には最適な教材だな。ありがとう、倫恵さん…。」
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「緊急連絡!教官は塾長室に全員集合!」
建物全体に響く塾長の放送。
土曜日の静かな夜は急に慌ただしくなった。
「何よ~、今帰ったばかりなのに!」
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「塾長、皆様集まられました…。」
すへ子教頭に促され、塾長室のテーブルに着席する。
その席の正面にはモニターが設置されていた。
「何、何?私がDVD買ってきたのもう塾長に知れてたの?
塾生への上映会の前に教官みんなで『ぽんぽこ』観るの?」
「……。」
「……。」
「倫恵さんは丁度人間界に出てた時だったから…。
私達全員を集めたという事はやはり例の…。」
「ええ、考えた結果…皆にも事実を知ってもらうことにしたわ…。
貴女達が人間だからこそ…それこそが私達の強味だわ…。
『あいつ』が山田くんという人間を仕向けたようにね…。」
「黄昏羅漢塾…そこの塾長が真理亜塾長に渡したDVD…。
私も観ていいのですね。」
「ええ、これから迫る危機の為…知ってもらうわ…。」
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「ねえ、そもそもこの妖怪の世界の電気ってどうなってるんですか?」
「え?ゆかりちゃん、そこ触れちゃう?」
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再生ボタンが押されると同時に美しき日本の海岸の景色が映った。そこに佇む痩せた静かな男性。30代前半が学者の様な雰囲気で…。
「松島や
それにつけても
嫁の欲しさよ
私が黄昏羅漢塾塾長の『バハムート』である!
ガブリエル~君の封印の壁はなんでこんな強力なの~?
念を送るだけで精一杯さ」続