**山田洋法との出会いから一週間後**
「たぁー!」
「やぁー!」
「ちょっと…私はかごめちゃんほど若くないんだから少しは手加減してよね~」
「申し訳ございません、教子師匠。
最近は自分の成長具合が自分でも実感出来るのが嬉しくて…。」
「ううん、それはいいのよ、私も楽しいから。
でも、朝練に昼休みに放課後と柔道の練習に付き合わされると、流石に年齢のガタを感じて…。
最近どうしたの?気合いの入り方が半端ないわよ?」
「いえ、お恥ずかしい話ですが…繰り返し保健室に通ううちに、治美先生が私の迷いを断ち切ってくださいました…。
あれこれ考えても仕方ないと。
あの人への気持ちを含めて私は私なんだなと…。」
「ふ~ん、恋してる女の子は輝いてるわね~。
先週の今ごろなんて、本当にこの世の終わりみたいなオーラ出してたのにね♪」
「あ、あれは治美先生が『不治の病』だなんて言うものですから…。
本当に私はこの心臓の動悸が止まらずに、あと数日の命だと思い込んで樹里亜さんとミラ宛に遺書まで書いてしまったのですから!」
「全く、治美ちゃんもそういうキツイ冗談は、一定レベルまでまだ成長してない娘には駄目よって私は言ったのにな~。
で、ドクター治美から正式な病名は聞いたの?」
「はい、昨日の放課後に保健室で、『医者には治せない恋患い』だと言われました。」
「それで?今も胸が苦しい?」
「はい、山田さんを想うと胸が高鳴り、摩亜耶さんの立場を考えると今でも胸が締め付けられますが…このドキドキが消えてしまうのは…もっと辛い気がします…。
先週と同じ土曜日が来てしまいましたが、あの人はもう、この敷地内に入って私に会うのは簡単ではないんだな…と思うと…。
悔しいや悲しいよりも、たった一日でも素敵な時間を私に与えてくれて『ありがとう。』の気持ちでいっぱいです。」
(うわぁ~乙女だな~。確かに深い仲にならない内に、山田くんは摩亜耶ちゃんと結ばれた方がかごめちゃんとしては傷は浅いわよね。
まぁ、治美ちゃんも既婚者の医師と不適切な関係が八方塞がりになりかけたから人間界を捨ててこちら側に来たんだけど…。
これがまだまだ若くて恋愛経験の少ないマツリちゃんやゆかりちゃんなら、友達目線で騒ぐだけで解決出来なかったでしょうね…人生って皮肉ね…。」
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「緊急連絡!教官は塾長室に全員集合!」
それは羅漢塾についての会議だった。続