妖!萌慎艶戯塾 第25話 「決意」 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

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このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「僕の父は登山が趣味でした…。」

と語る摩亜耶さんの婚約者の山田さん。
人間の彼が蜂の妖精「キラービー」の赤峰摩亜耶さんと婚約に至るにはどんな経緯があったのだろうか?
摩亜耶さんは冴木マツリ教官の政治の授業で女性の地位と権利の低さを訴えていた。
それは村の掟に従い、個人の感情に関係なく結婚させられることか?いや、摩亜耶さんの悩みはそれだけではない。
この山田さんが人間であることに加え…いや、これは私の推測か…。

「日本アルプスの奥地で、若き父は遭難しました。
そこを偶然、摩亜耶の父上に救われたのです。」

「そうだったの。キラービーが人間を助けるなんて、貴方のお父様はよほどの幸運だったわね。」

山田さんの話に相槌を打つ真理亜塾長。
私達には厳格な塾長だが、こんな優しい笑顔も見せるのだな。
やはり完成された大人の女性として、真理亜塾長は私の理想だ…。

「介抱された父は『必ずお礼に来る』と言って村を後にしたそうです。
その時、既に親同士の約束は交わされてたとも…。」

「約束?」

「ええ、山を愛する者同士、蜂蜜作りを生業とする者同士として、種族を越えた友情が芽生えたのでしょう。
最初は軽い口約束だったと父は笑いながら話していました。
『いつかお互いの子供が生まれたら、二人を結婚させようじゃないか』と。」

「まぁ、ロマンチックな話ね…♪
女なら誰でも憧れる男の友情物語だわ…ねぇ、鳥羽かごめさん?」

「は、はい。しかし、結婚はやはり本人同士の気持ちが…。」

「摩亜耶と僕の気持ちか…。本当にそうですね。
僕は物心ついた時から摩亜耶と過ごすのは極当たり前のことだった。
父が幼い僕を連れて、何度も日本アルプスの奥地にある、摩亜耶の村を訪れたからね。」

「あら、子供の頃から面識があったのね。
だから尚更、種族の違いを意識しない内にお互いの存在が刷り込まていった。
けど、成長するにつれお互いの環境が、ってことかしら?」

「はい、全くその通りです。
摩亜耶に会いに行くのは楽しみでしたが、僕には学校や、養蜂工場の跡取り息子としての生活があった。」

「そうね、摩亜耶さんの存在を自分の両親以外に理解してもらえないのは、思春期の男の子には苦痛だったかしら?」

「苦痛だなんて…。僕が辛かったのは、摩亜耶が成長するにつれ、『私は人間じゃない』と悩むようになったからです。」

…山田さんの一言一言が突き刺さり、胸が痛い