ソロモンNo.50「教鞭」の悪魔フルカスは語りだした。
萌慎艶戯塾の守護者として、老婆の姿と古河すへ子という名前、現在は教頭という地位を与えられた彼女は創立時からこの塾を見てきたのだった。
「77年前、年に一度のお祭りを全ての塾生が楽しみにしていました。
親兄弟を招いての一大イベントは、唯一外界の男性と出会える機会でもありましたから。」
「あ~、わかる。女子校ってそうなるよね」
「しかし、事件はたった一人の二号筆頭によって巻き起こされました。
少女は天に奉納する舞踊を披露しました。
それは歴代の二号生筆頭によって行なわれる栄誉ある儀式だったのですが…。」
「学園一の美人に与えらた女王の特権みたいなやつですね。人間の学校も妖怪の塾も一緒なんですね。」
それはそれは美しい舞でした。
艶やかな肢体に、魅惑的な口唇、妖しい視線に来場していた少年達は釘付けになりました。
少年達は自分だけが彼女をモノにしたいと思い、名乗りを上げた48人の男子によって血で血を洗う争いが起きたのです…。」
「面倒ね…」
「すへ子教頭、勿体ぶらなくていい。
壁向こうには因幡ミラの弟が所属する『羅漢塾』とやらがあるのだろう?
おそらくはこの萌慎艶戯塾を模した男子塾で、男女の交わりを禁止する為に真理亜塾長が壁を作ったんじゃないのか?」
「…はい、私も皆様に隠し通せるとは思ってませんが、私の方から羅漢塾や羅漢塾の塾長に関することをお話することは真理亜塾長から禁止されておりますので…。
では続きを。
その二号生は高見の見物をしてるだけでした。
48人の男子が自分を巡る血みどろの争いに、恍惚の表情を浮かべ高笑いをするだけでした。」
「うわぁ、最低な女…。」
「しかし、そこに49人目の男が現れました。
その男は別格で、少女に群がる48人の男子を一瞬で葬り去りました。
「強っ!」
「妖怪の世界では殺戮が当然の様に…。」
「少女は初めて恐怖を感じました。それは『決して招いてはいけない者』だったのです。」
「なるほど、問題は壁ではなく、そいつの存在の為か。」
「はい、後悔した少女は真理亜塾長に助けを乞いました。もうそれしか道はありませんから。」
「真理亜塾長は大天使ガブリエルでしょ?無敵じゃない!」
「いえ、13夜に及ぶ死闘で苦戦してたのは真理亜塾長です。」
「13日間も…!近所迷惑だわ!」
「その二号生の名はアメノウズメ」続