「姫?樹里亜さんはスライム族のお姫様なの?
うわぁ、妖怪の世界ってまだそういうのが残ってるんだ?
それだけでも来た甲斐があるわ♪
『お姫様』う~ん、いい響き♪この年になっても憧れちゃうわ~。」
「いえ、王冠の無い王なんか、一族を不幸にするだけですから…。
それに、人間社会に出たら関係ありませんから…。」
「貴女が壁越えを計画したのは、その『王冠』が理由かしら」
「治美先生は鋭いですね。
ですが…結果的に失敗して良かったかも…。
少し感情的になり過ぎてました。向こう側で捕まったら、私だけじゃなく…そうだ!つい長話をしてしまったが、ミラとかごめは?まさか教官室じゃ…?」
急ごしらえの医務室で寝ていた樹里亜はハッと飛び起きた。
「ええ、鳥羽かごめさんと因幡ミラさんは『壁越えを企てた』ってことで教官室で特別指導されてるわ。
私達、着任早々に飛んでもない場面に遭遇したみたいね。
でも駄目よ!樹里亜さんはまだ大人しく寝てなさい!
医師として傷の治ってない患者を行かせるわけにはいきません!
私の仲間と貴女の仲間、それに塾長を信じなさい!」
「はい…。」
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塾生指導室
「私が萌慎艶戯塾塾長三好真理亜である!
鳥羽かごめさん。まずは『萌慎艶戯塾四訓』を唱和しなさい。」
「はい!萌慎艶戯塾一号生、鳥羽かごめ!萌慎艶戯塾四訓を唱和致します!
一つ!塾生は己に備わった天然由来の萌えに感謝すべし!
二つ!塾生は社会の一員として慎ましい態度を心がけるべし!
三つ!塾生は艶やかなる魅力を身につけるべく、絶え間無い自己研鑽に勤しむべし!
四つ!塾生は常に遊び心を忘れず、戯れとは智恵を巡らせた心の余裕であることを肝に命じるべし!
以上、萌慎艶戯塾四訓!」
凛とした態度で声を張るかごめに対して、治美以外の四人は圧倒されていた。
「凄い…訓示ね…。」
「真理亜塾長らしさそのものだね…。」
「鳥羽かごめさん、ここは塾長の私と新任の彼女達しか居ないわ。
さぁ、他の教官に気兼ねなく萌慎艶戯塾のへの不満があるなら言いなさい」
「どうしてそれを…。」
「目暮樹里亜さんや因幡ミラさんの為ってのは本当の理由じゃないことくらい解るわ。私は塾長の三好真理亜よ。」
「はい、他の教官に内密なら…。
一号生の殆どがおクネさんの授業に不満を抱いてます!
今時、『機織り』なんて時代遅れです!
それを一年もなんて無意味です!」
続