鳥羽かごめの言葉は萌慎艶戯塾をより良くしたい思いからだった。
改革を望むその志しが、一族の再興を願う目暮樹里亜と意気投合し、彼女を一号生筆頭に強く推したのはかごめだった。
「来る日も来る日も機織りのペダルを踏み、糸車を回す毎日!
二号生に進級したら、手料理を作り続ける毎日!
それが悪いとは言いません。そこから学ぶ物もたくさん有り、役立てるかどうかは本人次第でしょう!
しかし、現代に生きる人間社会の女性からあまりにも逸脱し過ぎてはいませんか?
私は『門番』であり『守護鳥』の妖怪ガーゴイル。
『守る価値』が見出だせなくては…。」
「かごめ!ミラ!大丈夫か?」
勢いに任せて指導室の扉を開けたのは樹里亜。
慌てて後ろから治美も追いかけてきた。
「目暮さん、貴女はまだ傷が治ってないのよ!」
「治美先生、私は一号生筆頭だ!
一人だけ寝てるわけには…。」
「樹里亜さん、私は大丈夫です。
萌慎艶戯塾四訓を唱和した後は、建設的な提案をさせて頂いただけで…。」
「そうか、流石塾長は話がわかる。
で、ミラは?」
「いえ、ミラさんは樹里亜さんと一緒ではなかったのですか?」
「いや、てっきりかごめと一緒かと…」
「因幡ミラさんの処分は私が古河教官に任せたわ。」
「申し上げます、因幡ミラ一号生は、調理場で『洗い物』の罰に処しました。」
塾長の声と同時にまたも扉が開き、しわがれた声の老女が入ってきた。
先ほどの新井クネ教官は初老か熟年女性と言った感じだが、この古河と言う教官は明らかな老婆だった。
「古河教官、皿洗いとはあまりにも罰が重すぎます!」
「お黙りなさい!壁越えはそれだけ重罪です。今回は壁向こうの羅漢塾に通う弟さんに薬を届けようとした主犯です!皿洗いは相応の罰です!」
「…あの、話の途中すまない。皿洗いが重罰なのか?」
「妖怪は力が強すぎるから、皿を割らずに綺麗に洗うのは難しいんじゃない?お嬢様育ちのマツリちゃんは食器洗い機専門だけど。」
「おやおや、そちらの女性方が新しい教官様のようですね。
はじめまして私が二号生担当、ソロモンNo.50の悪魔『フルカス』こと古河すへ子でございます。」
「……。」
「……。」
「すへ子と書いてすえ子と読みます…。」
「……。」
「……。」
「だから、何かいろいろと古いのよ!ゆかりんもマツリンも突っ込みなさいよ。」
「突っ込みは倫恵弁護士の特技でしょ?」続