クロスステップ~僕たちが縮める二人の距離(僕許42) | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「結果」しか求めない両親の下で野球を続けるのは、俺に取って苦痛でしかなかった。
野球だけじゃない、勉強は「出来て当たり前」友達関係は「その子が役に立つかどうか」でしか判断されない中で、俺は次女の夏樹姉ちゃんだけが心の支えだった。
今でも俺の親よりも親らしい人だと思ってる。
エラーした日やノーヒットだった日に、夏樹姉ちゃんだけが優しく俺を受け止めてくれた。
そして姉ちゃんはやがて『最愛の人』に出会う。
高校で出会った「隼人(はやと)さん」さんだ。
俺はその時小学3年生。
野球を「楽しい」と思えたのは全部隼人さんのおかげだった…。

長女の春奈姉さんからは「役立たず」と苛められ、妹の冬香からは「恥ずかしい姉」と言われ続けていた夏樹姉ちゃんが明るく、本当に明るく生まれ変わった様に思えた。
仲の良い二人を見るのが俺は好きだった。
所属チームと父さんのシゴきに比べたら、俺が隼人さんと交流する野球なんて「遊び」だったかもしれない。
だが、生まれて初めて「仲間」「絆」の大切さを知った俺は技術的にも飛躍的に成長した。
そう、技術的にはもう「天才中学生」なんて枠組みを越えていたなんて、自分自身でも知る由もなかったよ…。
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(加賀谷)「おいおい、別にそれじゃあただのいい話じゃねえか?」

(早乙女)「ウチも…玉野君ほどじゃないけど親が厳しいから、外の世界で優しい人に出会えた感謝の気持ちはわかるわ」

(東瀬)「私も男に生まれてたら、お父さんは私の気持ちを無視して、玉野のお父さんみたいにスパルタコーチになってたのかなぁ…。」

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隼人さんは甲子園にこそ出れなかったが、首都圏の強豪社会人野球のチームにスカウトされ、就職が決まった。
夏樹姉ちゃんもスポーツとは無縁の旅行会社に就職が決まった。
大人として順当に社会に馴染みだした頃、二人は婚約した。
俺が中学2年生の時だった。

(のの香)「凄い!高校の付き合いのまま結婚なんて!」

(早乙女)「そうよね、高校生カップルなんて大学行ったら別れるパターンが多いのにね。」

俺も幸せだった。
幸せになって欲しかった…。でも…。

お互いの家族に結婚の意思を伝えた途端に…長女の春奈姉さんが妊娠したんだ。

「まさか…!?」

あぁ、隼人さんとの間に無理矢理作った子だ。
俺は…俺は春奈姉さんが許せなかった。夏樹姉ちゃん以上に怒ってた…。
最初は怖がらせてやるつもりだったんだ…。