『かっ飛ばせー！
玉野！山大倒せー！オーッ！』
スタンドとベンチが一体になった大声援だった。
かつて秋成に酷い目に遭わされた藤田さんも東瀬も、まるで競い合うかの様に秋成に声援を贈り続けた。
藤田さんの傍らの玉野秋成ファンクラブのみんなも、ただキャーキャー騒ぐだけでなく、選手としての秋成を応援する気持ちになったのは一目瞭然だ。
だからこそ…なんかごめんね…ベンチの様子を早乙女さんに見られてなくて良かったよ。
秋成、みんなのこの声が聞こえるだろ？
独りで野球やってんじゃねえよ！
お前にお姉さん達との間に何があったか知らないけど、どんな事を告げられても、僕は秋成の全てを受け入れるつもりだ！
そして…今は受け入れたいと思う僕の気持ちを秋成に受け入れてほしいとしか思えない…。
先に行動を起こした方から怖がりになるから、よく分からないけど、みんな強かになったり臆病になったりするのかな？
だったら何の為に人は人を好きになるんだよ！
「いったー！」
「伸びろー！」
「入れー！」
秋成は真ん中に入ったスライダーを力強く右打席で振り抜いた。
ベンチの想い、スタンドの想い、僕の想い、秋成の想い。
わけのわからない亡霊みないなモノを打ち砕く一発になってくれとスタンドインを誰もが願ったが…。
「あ～。」
歓声がため息に変わった瞬間だった。
バックスクリーンやや左の最前列に突き刺さるかと思われた打球はギリギリで失速し、相手センターの絶妙な跳躍によりアウトとなった。
「ここで打てなかったのは試合も恋愛もまだまだ続くって、天国の姉さんのメッセージか？」
「天国の姉さん？秋成はお姉さんと二人暮らしじゃ…。」
「あっちは夏樹姉ちゃんな。春奈姉さんは俺の打球で…。」
「秋成、何があったか知らないけど、今の秋成は『解放された』って顔してるよ！」
「玉野！私は野球が好きなあんたは嫌いじゃないわ！
今は…それしか言えない…しっかり守って…。」
＊＊＊＊
「真山先輩、すみません。」
「あとは任せな…。」
八回裏までは無難に抑えた小宮くんだったが、九回裏は流石に疲れが見えてきた。
1点を失って5-3。一死一二塁でマウンドには再び真山先輩が登った。
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一二塁間を鋭い打球が襲っても、外野に抜けることは僕たちが許さない。
倒れこみながら飛び付き、膝立ちで秋成に送球し、秋成から一塁へ！僕たちの二重殺で試合終了だ！
続