僕たちに許された二重殺(ダブルプレイ)32 試合編16 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

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このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
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7回表
貴川西3-2山大付属
一死二塁。

遂に僕はやったぞ!
逆転の二点適時二塁打を僕が打ったんだ…!

ベンチから歓喜の声。
スタンドから女生徒の声援。
何て気持ちがいいんだ…!

ムードメーカーの加賀谷先輩が大声で盛り上げてくれてる。
東瀬は殆ど涙ぐんで喜んでるじゃないか。

そんなに僕に期待してなかったのかよ?秋成は?あぁ、ベンチの奥だな。ここからじゃ見えないな。

もっと、誉めてくれ…っていいたいけど、試合はまだ続いてる。打者としの使命を果たした次は、ランナーとして生還することだ。

「ボール」

打順はトップに還り一番の須永先輩。

試合はまだ七回。
一点じゃまだ心許ない…。
先輩、頼みます!

「ストライク!」

相手投手の球が走り出した。
やはり逆転を許して気合いが入ったか?
僕の時より勢いがあるし、山大付属のナインはまるで今、試合が始まったばかりのようだ。
リードされてるのに、リードしてるように振る舞えるなんて…これが強豪のメンタリティか?

「ボールフォア!テイクワンベース!」

「いいぞ!須永先輩!ナイスセン!(選球眼)」

「ようし!今度はバットで僕が山大付属に引導を渡してやる!」

二番に入った投手の小宮くん。
先発の真山先輩がライトに回ったから、ライトで先発出場した川中先輩の打順に小宮くんが入った形だ。

「ストライク!」

豪快なフルスイングで一球目を空振りした小宮くん。
バットとボールは大きく差が開いていた。

大丈夫かな?小宮くんが打撃練習で快音を響かせたなんて、僕の記憶にないよ…。

「ストライクツー!」

やっぱり。悪いけど当たる気がしないよ…。
これならツーアウトでもいいから送りバントした方が良かったかな?
その時、一塁ランナーの須永先輩が、僕と二重盗塁のサインを出した。バッターボックスの小宮くんもサインに頷く。
うわぁ、盗塁か…緊張するなぁ…牽制で刺されないように…。

「今だ!」

自分としては最高のスタートを切ったつもりだけど…。

「カキン!」

バカ!小宮くん、何で打つんだよ!こんな時にバットに当たるなんて…!

三塁に向かう僕を横切るかのような左中間への鋭い打球!期せずしてヒットエンドラン成功か?
と、思ったのも束の間、相手センターのダイビングキャッチ!
直ぐ様起き上がり、二塁に送球され、僕は帰塁出来ずに二重殺。

場内の歓声はため息に変わる。
七回表、終了。