僕たちに許された二重殺 25 試合編10 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

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このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
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「ストライク!バッターアウト!」

五回の表
貴川西0-1山大付属

試合が後半に向かおうとする中、僕たちは1点が遠かった。

八番真喜志先輩が空振り三振で二死走者無し。

打順はラストバッターの僕だ。
一打席目はチャンスに三振したからな…。
今度こそ…。

バッターボックスに向かおうとする時、秋成は再び僕に「アレをやれ」

と言った。
わかってるよ。既に三振してる僕には何か「揺さぶり」を掛けないと突破口は開けない。
しかも二死ランナー無しで九番の僕なら、「奇策」に出ても最もリスクが少ないだろうさ。「奇策」が「奇行」に、ただの「余興」になりそうだけど…。

相手は滋賀県を代表する投手の都倉さんだ…。
今さら失うものはない…。
****
バットを目一杯長く持ち、可能な限りバットを立てて構える僕。スタンスは狭めでややクローズ気味に…。
左の長距離砲として僕が敬愛する小笠原道大選手の構えだ。
ファイル0015.jpg
一打席目と明らかに構えが違う僕に、山大付属の捕手は直ぐに気付いた。

「二死だからって、一発狙いか?
ちっちゃな僕ちゃんなら、身体を屈めて四球狙いのがいいんじゃないか?」

「アドバイスありがとうございます、お礼に僕がホームラン打ったらバク転でのホーインを披露してあげますよ。」

「ガキが…都倉!」

「キャー!」

「ボール」

挑発に挑発で仕返せば、一球目に顔近くのビーンボールが来ることはわかってた。
わかってれば避けられる。
大きく避けずに、軽くかわして余裕を見せる…。

「ストライク!」

インコース低めの速球を大きく空振り。
あくまで僕は長距離砲のつもりだ。

「ストライク!ツー!」

同じくインコース。
よし、ここまでは完璧。
これで相手は外角低めにツーシームを投げてくる。
バットを長く持ったのは、遠い所にも当てる為だ。
いくぞ…!

「魔技・フォルテシモ!」

左手はバットに添えるだけ。
思い切り大振りした「振り」でわざと三塁手の前に弱い打球を転がす!
バットに当たった瞬間、長打を警戒した相手サードは、一歩下がってしまう!
だが本当は片手で打った弱い打球だから、定位置より前にダッシュしなければならない!
スタートが遅れたサードは、球を掴んだ頃には一塁を駆け抜けた僕を見送ることになる!内野安打だ!
秋成!ドカベンの殿馬選手!ありがとう!
僕はやったよ!