…こんなに自分が女々しいとは思わなかった。
慎太郎は自分より遥かに女々しいと思い込んでいた。
でも、野球以外でも玉野と親しく過ごす慎太郎は、凄く男らしかった。
細身で中性的な顔立ちが変わるわけではないが、自信を持ってチームの中心になろうとする覚悟、そして孤高の天才玉野と対等なパートナーとして付き合おうとする姿勢が…いや、付き合うってそういう意味じゃなく…そうかもしれなくはないかも…って私は何処を一番気にしてんのよ!
「美由紀、ねぇ美由紀!」
今日は土曜日。
部活をしない生徒は午前で帰宅し、部活をする生徒はお昼を食べてから活動が始まる。
マネージャーとして顔を出せず、練習する慎太郎と玉野をフェンス越しに見てるだけの私は、この昼休みが苦痛だった。
空腹で練習が始まるのを待つか、黙って帰るか、何事もなくマネージャーとして野球部メンバーとお昼を食べるか。
決断出来ない私は結局、クラスメートのミクとノノが所属する手芸部に顔を出していた。
「美由紀の刺繍、凄い上手だって、顧問の馬堀先生誉めてたよ!
文化部の掛け持ちって全然普通だし、考えてみたら?」
小さい頃から、リトルリーグで着る自分のソックスやユニフォームを縫ってるうちに、私の裁縫の腕は上達してたようだ。
本来喜ばしいことなのに、慎太郎に会えなくなる理由が固まるというか、外堀を埋められるようで私は怖かった。
そして更に…。
「ねぇ、美由紀。
ノノが美由紀に、『一生のお願い』があるんだって」
「へぇ~、ミクなら毎日の様に『一生のお願い』だけど、ノノが私になぁにかな?」
「…金城くんのこと…。」
蚊の鳴くような声で、申し訳なさそうに切り出すノノ。
それだけでわかってしまった。
「あのね、私、完全無欠な玉野君みたいな男子より、頑張り屋さんであったかい金城くんの方が…。
ううん、まだ付き合いたいとかじゃなく…美由紀ちゃんが嫌じゃないなら…。」
「美由紀、断るなら今のウチだよ。
私は大切な親友二人、どっちの味方も出来ないけど、多分ノノは本気よ。」
「ちょ、ちょっと違うよミクちゃん、私は金城くんをもう少し近くで応援したいな~って…。勿論、美由紀ちゃんに嫌な思いさせたくないし…。」
ヤバい、ノノは確かに本気だ。自覚のない初恋だからタチが悪い。
「で?あたしが『嫌』って言ったら?
今の慎太郎の保護者っていうか、本妻は玉野でしょ。
許可貰えば?」
私、最低