勲章と指環 59(次回最終回) | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

短剣を投げつけ、舞台に上がる私。

「パシーン!」

悔しさと腹立たしさが込み上げ、感情のままに不忠を覚悟で殿下の頬を平手打ちしてしまった。

「…全て仕組まれていたのですね…。
カイザー丞相とアンナ、そしてここに居ないロイとエマも含めて…。」

「邪魔をしないで貰えませんかな。
これはハイネ王子たっての希望なのだよ。
さぁ、私の心臓はここです。
次こそは間違いなく…。」

額から流れる血を拭いもせずに自分を刺せと繰り返すカイザー丞相。
これが「市民の希望」 「大義の為の犠牲」だということはわかる。
けど…。

「ガハッ…。」

殿下の動きに視線を奪われた所に油断があった。
低い位置から懐に一足跳びで入り込み、みぞおちに肘打ちをお見舞いした。
剣が使えない時の私の隠し技だ。

「貴方のする事はいつも回りくどい。
…話が済むまで眠ってください。
決して以前に胸を触られたことの仕返しではありませんので…。」

「騎士団長様は流石の腕前だね。
冬から春まで引きこもってなんて信じられないくらいだ。」

「それを言うな、アンナ!」

「リディアの乱入で『お芝居』がメチャクチャだよ。
ジョンとハイネ殿下。
二つの国のトップが同時に最期を迎えるには最高の『舞台』だったのになぁ。」

「…学の無い私でも『民主化』の尊さくらいはわかっているつもりだ。
そちらの国でミネルバ王女が居なくなれば、民主化運動が活発になるのは自然だろう。
隣の我が国に波及するのもわかる。
だが、演劇の『手違い』でハイネ殿下に真剣を握らせ、『隣国の大臣殺し』の罪を着せるなど、私が許さない!」

「リディア、わかってくれ。
余命短い僕が愛する市民の為に出来ることなんて限られている…!
民主化の波の中で大衆は僕を処刑したがるだろうさ…。
ちょうどいい罪名が欲しかっただけさ…。
そしてアンナ先生は『父の仇討ちをしないのが本当の民主主義』と、出生の秘密を公表し、市民投票で大統領に名乗り出るはずだったんだ…。」

「投票で選ばれるリーセ王国の指導者にアンナが…。
そうだったのか…。」

「ジョンは僕の幸せの為になら喜んで犠牲になるつもりだったんだ…。
こんな風でしか愛情を表現出来なくても僕の父さんなんだよ…。」

「殿下、アンナ。
死は希望でも逃げ場でもありません。
スールシャール王国の王室と血統は私が絶やさせません!
丈夫で健康なお世継ぎを私が必ず生み育てます!」続