白夜の海賊紳士 2幕~幕間 勲章と指環 54 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

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このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

悲しみに暮れるミネルバ王女は、ジオンの愛が偽りだと思いたくなかった。

「これは私の使命」と自分に言い聞かせ、明日の戴冠式に応じる旨を副大臣のリュングベリに伝えた。

「結ばれなくても…。」

姫としては最期の夜を、自室のバルコニーから臨む。
儚く脆いながらも、独唱をはじめたミネルバ王女。
その夜の向こうには、同じ月を仰ぎ見るジオン=キャラガーを思っているのだろうか?

「私の心は永遠に貴方のものです。」

と、魂の伴侶となる誓いを込めたセレナーデに、観衆は目頭を熱くし、かく言う私もアンナの歌声とその表現力に魅了されていた。

(この女はどこまで完全無欠なんだ!?
普段、わざわざ男言葉で男装する必要もないだろうに!
天才の考えることはわからん…。
いや、ロイの場合は私が理解する努力を怠ったのだけど…。)

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「ロンド様、この後ですが…。」

二幕が終わり、明かりが入っても、私は席から動けなかった。
メルベリ殿に声をかけられ、やっと我に返った。

「す、すまない…つい、夢中になり…。」

「ええ、凄い迫力でしたね。
私もつい、警備の任務を忘れそうになりましたよ。」

(いや、私は完全にただの客になってました…。)

「やはり、他の警備兵やカイザー丞相が言われる様に、第一部は問題ありませんでしたね。」

「うむ、となると第二部。
目立ちたがりのジオン兄さんが劇場に乱入するなら特に四幕だな…。
『我こそが本物』と言いそうだ…。」

「はい、二部は私服警備兵も倍にしています。
出入口も再入場のチケット確認を厳しくする様に劇団と連携を取っています。
いくらキャラガー元外務大臣でも、今日のこの警戒をくぐり抜けれるはずありません!」

「そうだな…。例えくぐり抜けても、最後には私が居る。
このリディア=ロンドを突破出来るのは、私自身だけさ…。」

「それは頼もしいお言葉!
やはりロンド騎士団長はそうでなくてはいけない!
では、私は劇団側と打ち合わせに…。」

「あぁ、頼む。」

「そうだ、ロンド様。
学の無い私にはわからないのですが、本物のキャラガー殿が国を脱出する前に不思議な言葉を残していました。」

「不思議な言葉?」

「はい、『民衆はギリシャに学び、王国はローマに立ち還れ』と。
どういう意味でしょう?」

「君にわからないなら、私にもわからないさ。」

「実はカイザー丞相も全く同じ言葉を言ってたのです。」続