演目…『白夜の海賊紳士』
脚本演出…アルフォンソ=パウエル
配役
ミネルバ姫…アンナ
ジオン=キャラガー…ジョン=カイザー
あらすじ
病床の現国王は、一人娘のミネルバ姫に王位を譲る決意をした。
ミネルバもリーセ王国の為になら命を捧げる覚悟だった。
だがしかし、それは姫が心から愛する隣国の外務大臣、ジオン=キャラガーとの永遠の別れでもあった。
ジオンはミネルバを冷遇した。
失意のミネルバは即位を決意した。
戴冠式当日、教皇様が今まさに王冠をミネルバに授けようとした時…。
ジオンは颯爽と現れた。
取り押さえようとする衛兵をなぎ倒し、ジョン=カイザー丞相との一騎討ちにも勝利し、公衆の面前で堂々と姫を拐い、夢と希望を乗せて南海の孤島へ船を走らせたのであった。
二人の愛は水平線の彼方の夕陽の様に永遠の者になったのであった
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「こ、これがあの学者女が書いた舞台の筋書きか?
美化され過ぎであろう?」
「ロンド騎士団長殿、キャラガー殿が戴冠式に姫を連れ去ったというのは貴族や市民を問わず衝撃的な事件でした。
キャラガー殿は元海賊ということもあり、王族に不満を持つ者を中心に英雄だ!義賊だ!と持て囃す始末…。
リーセ王国も我がスールシャール王国も世論を気にしてキャラガー殿の討伐部隊を編成出来ぬまま…。」
「それでまだ若いメルベリ殿にお鉢が回ってきたということか…。
しかし、先ほど言ってた巷の噂とは?」
「はい、今向かってる先の劇場に予告状が届いたのです。
『イースターの公演日に、劇場で最も美しい女性を奪いに来ます。
『本物の』海賊紳士より』
と、あったのです。
町中では本物のジオン=キャラガーが戻ってきたと大騒ぎとなり、貴婦人の間では自分こそ最も美しいから海賊紳士に連れ去られたいだとか、官権は本物を逮捕するなとか…。
申し訳ございません、ロンド騎士団長様が居なければ自分達は市民を統制することも出来ず…。」
「君が謝るな。
職責を全うしなかった私が悪いのだから。」
そうか…街道がやけに賑やかだと思えば今日はイースターか…。
ロイがエマに告白したあの日は冬至の翌日だったから、私は四半期近くもシスターフラウの教会に引き籠っていたのか…。
「ロンド騎士団長様、大変申し上げにくいのですが…。」
「どうした?」
「もし自分がキャラガー殿を逮捕したら、自分を騎士団長に推挙すると上の者が言ってるのです」