勲章と指環 50 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「あのう…ロンド様…。
私事で申し訳ございませんが実は今日…。」

逃げ込んだ先の修道女は、私の身の回りの世話を担当してくれていた。

シスターフラウは「修行の一環だから」「孤児の私はロンド様に恩返ししたいから」と言い張り、私が厚意に甘え続ける内に、季節は冬から春へと移り変わっていた。

(いつまでもここに居れない。)

私は決断を迫られていた。

「どうしたシスターフラウ?
いつも言ってるように、私に気遣う必要はないのだよ。」

「はい…今日はあるお方から外出のお誘いを受けまして…。」

10代半ばの少女が頬を染めるその様は、「ある方」というのが男と直ぐにわかった。

「全く…。神にその身を捧げる修道女が男と逢い引きとは…。」

「あ、逢い引き?
違います…!
あ、あの方はここにお祈りにくるとても信仰の厚いお方でして…『人に奉仕するには人の気持ちがわからないといけない』と、アルフォンソ=パウエルの舞台を一緒に見に行こうと半ば強引に…。」

(コンコン!)

扉をノックする音が、少女の頬を更に紅くする。

「ジェ、ジェリド様!早すぎですぅ~。
まだ準備が…。」

(ジェリド?何処かで聞いた名前の様な…。)

「おはようございます!
シスターフラウ!
今日の舞台は特別な仕掛けがあると巷の噂を聞きつけ、約束より早くお迎えに…。」

『あ~!』

「君は私とロイを馬車で輸送してくれたメリベリ殿!」

「ロンド騎士団長様…!
突然行方不明となり、兵士の間では多数心配する声が挙がってます。
まさか王宮内の教会に居られたとは…。」

「…二人とも私に構うな。
大事な観劇だろう?」

「ロンド騎士団長様もよろしければ私達と一緒に舞台を…。」

(小声で)「君は何を考えている?シスターフラウは君と二人きりを望んでるに決まってるだろう?」

「し、しかし、誘うのには成功しましたが、自分はどのような会話をしたらよいのか…。
それと、ロンド騎士団長様には是非ともお耳に入れたい話が…。
ジオン=キャラガー元外務大臣様の消息についてです。」

「ジオン兄さん?追っ手を逃れて大海に出たのであろう?」

「はい…。
それが…劇場にキャラガー殿の存在を匂わせる予告状が届いたのです。
この件は誰もが敬遠し、まだ経験の浅い私に押し付ける有り様…。
シスターフラウと逢い引きを装い、潜入捜査をするつもりだったのですが…。
力を貸してくださいロンド様!」