「わ、わた、私!?
ちょっと、ロイ!自分が何を言ってるかわかってるの?
好きってあれだよね?
私達はジオン兄さんも含めて幼な友達だから、ハイネ殿下やリディアちゃんも含めてみんな好きっていう好きだよね?」
私以上に動揺するエマ。
私達はずっと幼なじみでいれると思っていた。
ハイネ殿下が国王になろうとも、私が将軍になろうとも、ロイが官僚を辞めて学者になろうとも。
そして…エマが誰かと結婚したとしても…。
ハイネ殿下はミネルバ王女と結婚すると思っていた。
エマは貴族か海運商の息子辺りと結婚すると思っていた。
ジオン兄さんも含めて私の中で一番結婚が早いと思っていた。
偏屈なロイはメイドや調理婦から不人気なことは知っていた。
私は剣の道に生き、生涯独身を貫くつもりだった。
ロイが文官、私が武官。
私とロイは夫婦になれなくても、国と王子を支える者として、魂で結ばれ続けると勝手に思っていた。
それは…いつか…ロイが私じゃない誰かを選んだとしても…。
「…いつの間にか…ハイネ王子の面倒を見るのが私の『仕事』になってたわ。
子供の頃はリディアちゃんとロイとまとめて三人を見てたのにね…。
王子がリディアちゃんに求婚した時は驚いたわ。
でも、今はそれ以上に驚いてる。
だって私はずっとリディアちゃんとロイを…。」
エマは私に気遣っていた。
戸惑いながらも本心を言わないでおこうとしているのは直ぐにわかった。
でも私は…。
「エマ、おめでとう。
エマは私に言ったことを覚えているか?
『女に取って、求婚されるって、何よりも名誉なことなんだよ!それがハイネ殿下からだなんて、国中の女の子が羨ましいがるよ!』
とな…。
今、私も同じ気持ちだ。
ロイに求婚されるなどと、国中の女が羨ましがるに決まっている!
…お幸せに…!」
聞きたくなかった…。
エマが承諾する言葉を…。
見たくなかった…。
ロイが歓喜するその姿も…。
心を奪われたくなかった…。
私を想うハイネ殿下に…。
考えたくもなかった…。
これからの私…。
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あれからどれくらいの時が過ぎただろうか?
私は王宮内の教会に逃げ込んでしまった。
修道女が、私に日々の出来事を伝えてくれた。
ジオン兄さんは本当に、ミネルバ王女を公衆の面前で拐って行ったこと。
カイザー丞相が表向きはジオン兄さんをお尋ね者にしたこと。
そしてあの学者女がこの顛末を舞台化した事も。続